ナンバ走り

ナンバ走りについて

ナンバ走りは、江戸時代の日本における飛脚の走法に起源を持つ独自のスタイルで、「ナンバ」が元となっています。この走法の特徴は、右手と右足、左手と左足を同時に使って走る点ですが、「ナンバ走り」と称されるものの中には、実際にはこれとは異なる走法が含まれることもあります。古武術研究家の甲野善紀の著作によって、その名称が広まり、スポーツにおける実践にも注目が集まっています。

江戸時代の飛脚は、1日に数十キロメートルから場合によっては100キロメートル以上を走り抜けたとされていますが、その具体的な走り方は失われており、文献や映像も残っていないため、詳細は推測の域を出ていません。ただし、現在でもウルトラマラソンやトレイルランニングでは、手足を逆に出す一般的な走法が1日に100キロメートル以上の距離を走ることを可能にしています。

ナンバ走りが一般に知られるようになったのは、甲野善紀と桐朋学園大学の教授である矢野龍彦による研究と指導のおかげです。特に2000年、桐朋高校のバスケットボール部がこの走法を取り入れたことで、東京代表としてインターハイ出場を果たしました。さらに、新潟県のいくつかの高校でも同様の取り組みが行われています。

また、2003年の日本陸上競技選手権で20秒03というアジア新記録を樹立した末續慎吾選手は、ナンバ走りの動きを意識して走ったと語り、これがナンバ走りの認知度向上につながりました。しかし、末續選手が実際に用いた走法は、正確には「ナンバ」に基づくものではなく、ナンバの要素を取り入れた効率的な走り方として広まりました。

末續慎吾の走法は、意外にも古武術や哲学的な考察から成るものではなく、当時の男子100メートル日本記録保持者伊東浩司や、初動負荷理論に基づくトレーニングを行っていた小山裕史の助言のもとに創り上げられました。また、末續選手のコーチであり元日本記録保持者の高野進が、膝を上げずに前に出ることに重きを置いた走法を取り入れて、そのスタイルが変化したことも多くの要因の一つとされています。

ナンバ走りは、その上肢の振りや上体の捻りが少ないため、高い効率性を誇り、楽に走れるとされています。しかし、2011年に東海大学体育学部の内山秀一が発表した研究では、ピッチの増加がナンバ様の走り方を生み出すことは確認されましたが、運動負荷を低減させることにはつながらないことが示唆されています。

このようにナンバ走りは、単に過去の伝統を引き継ぐだけでなく、現代のスポーツ科学やトレーニング理論と結びついて進化していることが注目されている走法です。これからも多くの研究や実践によって、その可能性が広がることが期待されます。

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