ナーワル (原子力潜水艦)

ナーワル (USS Narwhal, SSN-671)

ナーワル（USS Narwhal, SSN-671）は、アメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦であり、その艦名はイッカクに由来しています。ナーワルは、アメリカ海軍で同名の艦が存在する中で、まさに3代目にあたります。特にこの艦は試験艦的な性格が強く、同型艦は存在しません。

設計と特徴

ナーワルは、同時期に建造されたグレナード・P・リプスコム（1974年就役）と共に、原子力潜水艦の静粛化に取り組むために設計されました。原子力潜水艦において、最大の騒音源は減速ギアと冷却水循環ポンプであり、これを抑えることが求められます。グレナード・P・リプスコムが減速ギア・ボックスの廃止に踏み切ったのに対し、ナーワルは自然循環式原子炉（NCR: Natural Circulation Reactor）を採用することで、冷却水循環ポンプの使用を避けることに成功しました。

この設計により、ナーワルは高い静粛性を実現し、運用成績も良好でした。しかし、自然循環式原子炉には、配管が複雑で容量が大きくなるといった欠点があり、特にスレッシャーの沈没後にはその問題が指摘されました。それでもナーワルのS5G原子炉はのちにオハイオ級潜水艦において改良が行われ、その技術的な成果は今なお生かされています。また、ナーワルの建造に際しては、スタージョン級の設計が多く流用されており、艦型や武器システムは同級に準じた完全な戦闘能力を持っていました。

艦歴

ナーワルは1966年1月17日にコネチカット州グロトンにあるエレクトリック・ボート社で建造が起こり、1967年9月9日に進水しました。1969年7月12日にはW・A・マットソン艦長の指揮のもとで正式に就役し、期間中には数多くの功績を上げ、褒章も受けています。

1989年に発生したハリケーン・ヒューゴーはナーワルにも影響を及ぼしました。艦はハリケーンに備えて多数のワイヤーで繋がれていましたが、第一波が襲った際にワイヤーが切断されてしまい、漂流する事態となりました。乗員たちが艦を桟橋に戻そうと奮闘する中、第二波がやってきてナーワルは川に沈み、艦のセイル（艦橋部分）を地上に露出したままハリケーンを耐えしのぎました。

ナーワルは1999年7月1日に退役し、2001年10月1日には海軍の核動力艦船および潜水艦再生計画に登録されました。ただし、解体は行われず、原子炉および推進機器の撤去後は、ケンタッキー州ニューポートの全米潜水艦科学センター（NSSDC）で教育用の教材として利用されています。2007年度には一般公開が計画されていましたが、運営費が高過ぎるため公開は見送られました。

おわりに

ナーワルは、アメリカ海軍の原子力潜水艦技術の発展に寄与し、多くの教訓を残しました。退役後も教育機関としての役割を果たし、未来の海軍技術者たちにその功績を伝えています。

もう一度検索