ニア・ダーク/月夜の出来事

『ニア・ダーク/月夜の出来事』（原題：Near Dark）は、1987年に公開されたアメリカ映画です。キャスリン・ビグロー監督の商業映画としては実質的なデビュー作にあたり、後にアカデミー賞を受賞する『ハート・ロッカー』(2009年)へと繋がる重要な作品です。脚本には、サスペンス映画『ヒッチャー』(1986年)で知られるエリック・レッドが参加し、音楽は『恐怖の報酬』(1977年)などを手掛けたタンジェリン・ドリームが担当しています。

本作は、西部劇の要素を取り入れた独特な世界観、印象的な青色を基調とした映像美、そして容赦ない暴力描写が特徴的な吸血鬼映画です。従来の吸血鬼映画のイメージを覆す、斬新なアプローチが評価されています。しかし、完成直後に製作会社が倒産した影響で、十分な宣伝と配給網を確保できず、興行的には成功を収めることができませんでした。しかし、その芸術性は高く評価され、1988年のパリ国際ファンタスティック&SF映画祭ではグランプリと主演女優賞を、同年のブリュッセル国際ファンタスティック映画祭では準グランプリを受賞しています。

物語は、カウボーイの青年ケリブが一夜の出会いから吸血鬼の世界に足を踏み入れる姿を描いています。ある月夜、酒場を訪れたケリブは、メイと名乗る美しい少女と出会います。しかし、メイは吸血鬼であり、彼女に噛まれたことでケリブも吸血鬼へと変貌してしまいます。メイとその仲間たちと共に放浪の旅に出ることになったケリブは、次第にメイに惹かれていきます。しかし、生きるために殺人を繰り返す吸血鬼たちの掟に従うことができず、苦悩します。人殺しを拒むケリブに対し、吸血鬼のリーダーたちは怒りを募らせ、彼を処刑しようと襲い掛かります。

主要キャストは以下の通りです。

ケリブ：エイドリアン・パスダー（吹替：速水奨）
メイ：ジェニー・ライト（吹替：佐々木優子）
ジェシー：ランス・ヘンリクセン（吹替：小林清志）
セヴェレン：ビル・パクストン（吹替：石塚運昇）

また、ランス・ヘンリクセン,ビル・パクストン,ジェニット・ゴールドスタインは、前年の「エイリアン2」でも共演しています。

本作は、ジョン・カーペンター監督もお気に入りの吸血鬼映画として挙げています。また、2005年にはリメイク版の製作が発表されましたが、諸事情により中断されています。

『ニア・ダーク/月夜の出来事』は、従来の吸血鬼映画のイメージを覆す、独特な世界観と映像美が魅力の作品です。カルト的な人気を誇り、多くの映画ファンに愛されています。

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