ニオイガモ

ニオイガモ（Musk Duck）

分類と名前の由来

ニオイガモは、カモ目カモ科に分類される鳥類です。学名はBiziura lobata。その和名と英語名（Musk Duck）は、繁殖期のオスが発する独特の強い体臭に由来しています。

生息地

オーストラリア大陸南部およびタスマニア島に分布し、主に淡水の湖沼や湿地に生息します。

形態

性別による体格差が大きく、オスの全長はおよそ60-70cm、メスはその半分程度です。体色はオス、メスともに似ており、頭頂部は黒色、上面は黒色地に灰色の細かい横縞、下面は白色で暗褐色の小斑が散らばります。嘴（くちばし）は黒色、足は灰色です。オスの最大の特徴は、下嘴の下にぶら下がる丸く膨らんだ黒い喉袋で、繁殖期のディスプレイに使われます。メスにはこの大きな喉袋はありません。尾羽は硬く、水上で立てることが多いです。

生態

普段は単独か番いで過ごし、大きな群れは作りません。夜行性の傾向があり、日中は休息します。警戒心が強く、危険を感じるとすぐに水中に潜ります。

食物

食性は主に動物食で、潜水を得意としています。水中に潜り、貝類や甲殻類、両生類、魚類などの水生動物を主に捕食します。また、ハスの種子のような植物も摂取します。

繁殖

繁殖は環境条件が整えば行われ、特定の季節に限定されません。繁殖形態は乱婚型で、特定のペアを形成するのではなく、複数の相手と交尾します。巣は水辺の茂みや水草の中に作られます。一度に産む卵は1-3個と少ないですが、他のカモの卵に比べて大型です。

ヒナが孵ると、主にメスが世話をします。メスは幼いヒナを背中に乗せて運び、潜水して捕らえた餌を与えるなど、献身的に育てます。オスは育雛にはほとんど関わりません。

繁殖期の行動

繁殖期になると、オスは強い体臭を放ち、メスへのアピールや縄張りの主張に用いると考えられます。また、オスは複雑なディスプレイ行動を行います。喉の黒い袋を膨らませたり、尾羽を立てたり広げたり、水しぶきを上げたりするなど、多様な行動でメスに求愛します。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、「軽度懸念」（Least Concern）と評価されています（Ver. 3.1, 2001年）。現時点では絶滅の危険性は低いとされています。

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