ニコニコ寮

ニコニコ寮

ニコニコ寮は、秋本治による人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』に登場する、警察官のための架空の独身寮です。主人公である両津勘吉をはじめ、多くのキャラクターたちがここを拠点に生活を送っており、作品における数々のエピソードの舞台となりました。本項では、寮自体の概要や歴史、そこで繰り広げられた出来事、そして寮を切り盛りする管理人について詳述します。

寮の建物と設備

ニコニコ寮は基本的に男性警察官のみが入寮できる施設です。建物の入り口には縦書きで「ニコニコ寮」と書かれた看板が掲げられた門があり、その奥に寮の建物があります。初期は木造三階建てでしたが、老朽化に伴い昭和59年の春に建て替えられ、以降は鉄筋コンクリート造りの四階建てとなりました。一階には管理人が常駐する管理人室が設けられています。部屋数は全部で25室あり、広さは一室あたり四畳半から六畳程度です。風呂とトイレは共同で使用する形式で、寮内には住人向けの食堂も完備されており、管理人や食堂のおばさんが食事を提供しています。当初は一部屋に二人が基本の相部屋形式が多かったのですが、時代の変化やプライバシーへの配慮から、連載末期には一人部屋が主流となりました。ただし、両津勘吉は相部屋が基本だった時期でも、特別扱いを受けて一人で部屋を使用していた期間が長くあります。寮の住所については、初期には葛飾区亀有3丁目1番地とされていましたが、後に葛飾区亀有8丁目8番地に変更されています。

入寮と住人

ニコニコ寮への入寮は必須ではなく、警察官の誰もが入寮するわけではありません。例えば、主要キャラクターである中川圭一は自身の高級マンションに住んでいますし、凄苦残念（旧名：法条正義）も警察官になってからは実家から一般のアパートへ引っ越しています。両津勘吉も、連載開始当初から長く寮に住んでいましたが、一時的に親戚である擬宝珠家が経営する「超神田寿司」に住み込んでいた時期もありました。しかし、その後再びニコニコ寮へと戻っています。

寮には両津勘吉をはじめ、日暮熟睡男、凄苦残念、左近寺竜之介、又崎巡査、太田巡査、恵比須巡査、松本巡査、鎌田巡査、板池巡査など、多くの個性的な警察官が住人として登場しました。過去には戸塚金次や、女性転換前の麻里愛も住んでいた時期があります。麻里愛は後に女子寮へ移りました。アニメ版では本田速人も住人として描かれています。

寮で巻き起こる騒動

ニコニコ寮は、特に両津勘吉の行動によって度々騒動が巻き起こる場所でもあります。建て替え後の鉄筋コンクリートの寮も、日暮熟睡男が無理やり冬眠から起こされて激怒した際に、その超能力で全壊させられたことがありますが、なぜか後のエピソードでは何事もなかったかのように元通りになっています。また、両津の部屋はガス爆発や火災、爆撃などによって四回も破壊されるという、通常では考えられないような被害を受けています。

両津は寮の空き部屋を利用して、金儲けを企みカブトムシやクワガタ、果ては実験用のゴキブリまでを大量に飼育したことがあります。特にゴキブリは両津が世話を放棄した結果、短期間で十万匹以上に増殖し、寮内が阿鼻叫喚の地獄絵図と化した壮絶なエピソードも存在します。また、寮の共同浴場では、珍しい錦鯉の新種「両津三色（アニメでは両津四色）」を飼育していた時期もありました。

管理人が不在の際には管理人代理を務めたこともありますが、管理業務をないがしろにし、食費を浮かせるために安売りのバナナを大量に購入して後輩に奇妙なバナナ料理を無理やり食べさせるなど、好き放題に振る舞いました。過充電した自家発電の電気を無断で売電して私腹を肥やしたり、管理人の入院中に寮の空き部屋を一般人に有料で貸し出し、本来入寮するはずの新人警察官を庭に設置したカプセルホテルに住まわせる「マドモアゼル亀有」計画を実行したりと、その商魂と行動力は寮内でも遺憾なく発揮されました。

その他にも、庭で密造酒を造ったり、近所のコンビニエンスストアから廃棄される弁当や食品を「犬にあげる」と偽って持ち帰り、賞味期限を改ざんして寮の前で「両津ストアー」を開店して販売したりと、様々な問題行動を起こしました。

夏の暑い時期には、多くの部屋にクーラーがないことから、唯一クーラーがある太田巡査の部屋から、ダクトを使って各部屋に冷気を送ろうと試みましたが、結局太田のクーラーを壊してしまい、その後中古クーラーを大量に取り付けた結果、寮内の気温が極端に下がるという騒動も発生しました。

両津が一時退寮した後、寮の住人の中にはマネキン人形や超合金のコレクションを部屋いっぱいに集める者が現れましたが、一部の住人は両津や管理人の説得により収集を止めることもありました。寮の屋上には、両津が設置したソーラーパネルが並べられており、その一角には法条巡査の家庭菜園も作られています。

管理人：白浜カトリーヌ（吉原トメ）

ニコニコ寮の管理人は、寮の初登場と同時に作中に姿を見せました。長らく名前は明かされず、「おばちゃん」（両津からは稀に「ばあさん」とも）と呼ばれていましたが、連載が進むにつれて「吉原トメ」という名前が明かされ、さらにその後「白浜カトリーヌ」に改名したことが判明しました。彼女は寮の住人たちのことを常に気にかけており、面倒見が非常に良い人物です。そのため、住人たちからは母親のように慕われており、その世話に感謝されると「両さんの世話に比べれば何ともない」と謙遜するほど、両津に対しては特別な思い入れがあるようです。両津との付き合いは30年以上にも及び、屋根の修理や管理人代理といった重要な仕事を両津に任せることもあります。両津が一時寮を出た際も、彼の部屋を空けたまま帰りを待っていました。連載末期には登場頻度が減り、最終回にも姿を見せることはありませんでしたが、アニメ版では両津との出会いが彼女のその後の人生に影響を与えた可能性が示唆されたり、最終回で両津との別れを惜しんで大泣きしたりするなど、両津との強い絆が描かれています。

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