麻里愛

麻里 愛 (マリア)

『こちら葛飾区亀有公園前派出所』に登場する架空の警察官、麻里 愛（あさと あい）は、物語に欠かせない個性豊かなキャラクターの一人です。その名前は「マリア」という通称で広く知られ、これは原作では両津勘吉が、アニメ版では愛本人が名付けたと設定されています。新葛飾警察署交通課に所属し、亀有公園前派出所を勤務地としています。舞台版では斉藤レイ、アニメ版では麻生かほ里が演じました。物語では、彼女自身の波乱万丈な人生と共に、その特異な家族である麻里家についても描かれています。

人物像とプロフィール

マリアは基本的に優しく誠実、常識的な人物ですが、両津の無茶な行動に巻き込まれ、協力してしまうなど意思が弱い一面も見られます。しかし、金銭のためだけに動く両津には明確な軽蔑を示すこともあります。一人称は「私」または「マリア」で、「ですます調」の語尾に「わ」をつける独特の口調が特徴です。

身体的なプロフィールには資料によって多少の差異がありますが、身長は約170cm、体重は約50kg台とされており、スリーサイズはB93cm台、W58cm、H88cmのGカップという非常にグラマラスな体型です。誕生日は5月5日（アニメ版では4月14日）、出身地はニューヨーク（アニメ版では東京都）とされています。血液型はO型。正確な年齢は不詳ですが、初登場時は20歳前後と描写されています。着用する制服は薄紫色が基調で、警察官のフォーマットに沿っています。

波乱の来歴と変遷

マリアの人生は、その身体的な変遷が大きな特徴となっています。警察官になる以前は、ボディビルコンテストで入賞し、17歳でキックボクシングの無敗チャンピオン（麻里竜二）となるなど、超人的な身体能力を持っていました。しかし、鍛えられた肉体と女性的な顔立ち、声とのギャップに悩み、女性に縁がない孤独を感じていました。

この苦悩の末、両津に似た風貌のコーチ、岩鉄岩男の言葉をきっかけに、女性として生きることを決意します。徹底的なシェイプアップを経て女性的な容姿を手に入れた後、両津と運命的な出会いを果たし、彼に一目惚れ。両津に会いたい一心で、わずか数週間という短期間で警察官の道を選びます。

物語の途中、魔法使いの花山理香の力によって、一時的に、そして後に完全に女性となります。特に後者の完全な女性化（原作111巻）は、両津からの「男だから結婚できない」という発言にショックを受けたことが直接のきっかけでした。この変化は妹の麻里稟の身体をコピーすることで実現したと明かされており、戸籍も女性に変更されました。この変遷は、連載当時の社会的な背景や作者の意図も影響していると考えられています。

初登場は原作67巻で、新任警官として亀有公園前派出所に配属されました。登場当初は描き方に試行錯誤が見られましたが、後にレギュラーキャラクターとして定着。一時期登場頻度が減少しましたが、完全に女性化してからは再び主要人物として活躍する機会が増えました。

驚異的なパワーと運動能力

普段は穏やかなマリアですが、その身体能力は『こち亀』キャラクターの中でも屈指です。特に膂力が桁外れで、単純な力比べでは両津をも上回り、屈強な海兵隊員を腕相撲で下したこともあります。スチール製ロッカーを一蹴りで変形させたり、ヘリコプターを素手で破壊したりと、そのパワーは計り知れません。走るスピードも非常に速い一方で、自動車の運転は苦手であり、中川の高級車を大破させた経験もあります。女性化後も本人はパワーが落ちたと言いますが、その能力は衰えていない様子が描かれています。

両津への一途な愛情

マリアの両津勘吉への愛情は、物語を通して非常に強く描かれています。当初は岩鉄コーチに似ていることから惹かれましたが、やがて両津自身を深く愛するようになります。女性化してからも両津への想いは変わらず、彼のためならばどんな困難にも立ち向かう決意を見せます。

かつて警察寮で両津と同室だった際には、荒れ放題だった部屋を片付け、家事全般をこなすなど献身的に尽くしていました。女子寮に移った後も、自室を大量の両津グッズで埋め尽くしたり、家電の音声を両津の声に改造したりと、その愛情表現はエスカレートしています。両津が他の女性と親しくする様子を見ると激しく嫉妬し、行動に出ることも少なくありません。

個性的な家族構成

マリアの家族もまた強烈な個性の持ち主たちです。父である麻里晩（あさと ばん）は、植木流翻堕羅拳の総帥で、「ホンダラおやじ」の通称で知られる拳法の達人です。しかし、その技は奇妙なものが多いというギャップがあります。妻の今日子には頭が上がりませんが、夫婦仲は良好です。一方で他の女性を口説くなどの一面も。

母の麻里今日子（あさと きょうこ）は、料理研究家でありながら極度の潔癖症で、非常に気の強い女性です。若くして晩と駆け落ちし結婚しましたが、晩に教わった格闘技で彼を凌ぐ腕力を持つに至ります。その美貌は娘たちにも受け継がれており、夫への愛情は深いものの、嫉妬深い一面もあります。

双子の妹、麻里稟（あさと りん）は、通称「マリリン」として香港で活躍する国民的女優です。姉（兄）である愛と瓜二つですが、性格は非常に気が強く、男性に対して大胆な態度をとることが多いです。武術にも長けており、姉のマリアも認めるほどの使い手です。物語ではボルボ西郷との関係が深く描かれました。

アニメ版での描写

アニメ版における麻里愛は、原作とは異なる描写が散見されます。初登場エピソードや、両津が彼女の身体的特徴に気づく経緯が原作と異なります。また、男性としての肉体を持っていることが強調される演出が多く見られました。最も大きな違いは、原作で完全に女性となったのに対し、アニメ版では基本的にニューハーフのままで物語が完結した点です（一度だけ巻頭カラーで女性化した姿が描かれた例はあります）。性格面でも、原作より感情の起伏が激しく、嫉妬心をあらわにする場面が多く描かれています。

補足事項

マリアのキャラクター設定は、同時期の他の漫画にも影響を与えています。例えば、藤島康介氏の『逮捕しちゃうぞ』に登場するニューハーフ警官、葵双葉との類似性が指摘されており、『超こち亀』では両キャラクターが共演する企画も行われました。

物語初期、トランスジェンダー期のマリアは性別適合手術を行っておらず、外見は女性に近かったものの、身体的には男性の特徴を持っていました。この時期、女子更衣室を平然と使用するなどの描写もありました。

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