ニコライ・ラドフスキー

ニコライ・ラドフスキー（Nikolai Ladovsky, 1881年 - 1941年）は、ロシアを代表する建築家、都市計画家であり、教育者、研究者としてもその名を広く知られています。モスクワ絵画彫塑建築専門学校を卒業後、彼は新設されたヴフテマス（国立高等美術工芸専門学校）の建築学部で教鞭を執り、後進の育成に力を注ぎました。ラドフスキーは、芸術集団ジフスクリプトアルフやインフクの会員としても活動し、アスノフやARUといった革新的な建築団体の創設にも携わりました。

教育者・研究者としてのラドフスキーは、建築のフォルム、構造、空間、そしてそれらが人間の心理的認識に与える影響といった、建築の本質的な問題に深く取り組みました。彼は、ソ連において既成の様式にとらわれない新しい建築フォルムを提唱した先駆者の一人として評価されています。1921年には、芸術文化大学に建築家グループを設立し、教育活動をさらに発展させました。

都市計画の分野においては、ラドフスキーは「発展都市」という独自のコンセプトを提唱しました。これは、都市の成長速度を考慮に入れ、それに対応した都市計画策定手法を開発するというものでした。このコンセプトに基づいて、1930年には「パラボラ型都市理論」を発表しました。また、1924年から1925年にかけてモスクワの住宅地計画を作成し、1930年にはモスクワ・トヴェルスカヤ通り住区の設計を手がけるなど、実践的な都市計画にも積極的に関わりました。

ラドフスキーの代表作としては、以下のものが挙げられます。

クラースヌイエヴォロータ駅：その特徴的なデザインは、今もなお多くの人々を魅了しています。
トヴェルスカヤ通り沿いの集合住宅：モスクワの都市景観に貢献した作品です。
地下鉄ルビャンカ駅プラットフォームホール：地下空間におけるデザインの可能性を示しました。
モスクワ・クラスナヤ・ヴォロータの地下鉄エントランス・パビリオン（1935年）：都市における公共空間のあり方を再考させる建築物です。
リゾート都市計画コンペティション「緑のモスクワ」（グリーンシティ）1等当選案（1929年）：自然と調和した都市計画の先駆けとなる提案でした。



ラドフスキーの研究は、現代建築にも大きな影響を与えています。彼の業績についてさらに深く知るためには、以下の参考文献が役立つでしょう。

ロシア建築三つの旅 [ユーラシア・ブックレット] (No．61) (浜野アーラ著、浜野道博 訳、東洋書店、2004.6)
ロシア・アヴァンギャルド建築 （INAX叢書８) (八束はじめ著、INAX、1993.11)
零の形態 [叢書・二十世紀ロシア文化史再考] (マレーヴィチ著、宇佐見多佳子訳、水声社、2000.11)

これらの文献を通じて、ラドフスキーの思想と実践をより深く理解することができるでしょう。ニコライ・ラドフスキーは、建築家、都市計画家、教育者、そして研究者として、多岐にわたる分野でその才能を発揮し、20世紀の建築界に大きな足跡を残しました。彼の革新的なアイデアと実践は、今日の建築や都市計画においても重要な示唆を与え続けています。

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