ニコラウス2世 (ローマ教皇)

ニコラウス2世：教皇権強化と帝国との対立

ニコラウス2世（在位1059～1061年）は、11世紀中頃のローマ教皇であり、教皇位をめぐる争いと、神聖ローマ帝国との対立という激動の時代にあって、教皇権強化に大きく貢献した人物として知られています。俗名はブルゴーニュのジェラール。フィレンツェ司教を経て教皇に選出されました。

対立教皇ベネディクト10世との抗争

ニコラウス2世の教皇位獲得は、対立教皇ベネディクト10世との激しい闘争によって成し遂げられました。ベネディクト10世は有力貴族の支持を得て教皇に選出されたものの、選挙の不正を指摘され、ローマから追放されます。この隙を突いて、後にグレゴリウス7世となるイルデブラントは、ジェラール（ニコラウス2世）への支持を呼びかけました。

シエナにて対立教皇として擁立されたニコラウス2世は、ストリでの会議でベネディクト10世を廃位・破門。その後、ローマを制圧し、ベネディクト10世を逃亡に追い込みました。ノルマン人の軍事力も活用して、ベネディクト10世とその支持者への報復戦争を展開。幾多の戦いや包囲を経て、ベネディクト10世は降伏し、教皇位を放棄せざるを得ませんでした。

ノルマン人との同盟と教皇権の強化

ニコラウス2世は、自らの権力基盤を固めるため、南イタリアで勢力を伸ばしていたノルマン人と積極的に連携しました。ノルマン人は、シチリア島におけるイスラム勢力の征服という、教皇自身の野望を実現するための重要な軍事力として認識されていました。

メルフィにおいて、ニコラウス2世は、ノルマン人の指導者であるロベルト・イル・グイスカルドにアプーリア、カラブリア、シチリアの公爵位を授けました。これは、教会の擁護という誓約と引き換えに行われた重要な政治的合意でした。この連携は、ローマ貴族からの教皇庁の独立を促進し、教皇権の強化に繋がりました。また、偽書とされるコンスタンティヌスの寄進状を背景に、教皇庁の独立性と権威を高める政策が推進されました。

ミラノ支配の確立と教会改革

ニコラウス2世は、ミラノにおける聖職者間の争いを調停し、ミラノ大司教をローマの支配下に置きました。この勝利は、ラテラノ宮殿で開催された教会会議において、ミラノの司教たちを強制的に出席させることで喧伝されました。この会議は、グレゴリウス改革と呼ばれる聖職者規律の粛正や、教皇選挙改革といった、教会史に大きな影響を与える改革を推進しました。

教皇選挙改革

それまでの教皇選挙は、ローマ貴族や皇帝の強い影響下にありました。ニコラウス2世は、1059年の教会会議において、教皇選挙の改革に着手。枢機卿会議による選挙という、ローマの世俗勢力からの独立性を高めるシステムを確立しました。この改革は、後世の教皇選挙制度の基礎となりました。

神聖ローマ帝国との対立と死去

教皇権の急速な拡大は、神聖ローマ帝国との対立を招きました。イタリアへの支配権を主張する皇帝ハインリヒ4世との激しい対立の中で、ニコラウス2世は病に倒れ、1061年に死去します。彼は後継者にアレクサンデル2世を指名しましたが、ハインリヒ4世の母アグネスは対立教皇を擁立し、教皇位は再び分裂状態に陥りました。ニコラウス2世の側近であったイルデブラントがグレゴリウス7世として教皇になると、教皇と帝国の対立はさらに激化し、歴史的な対立へと発展していきました。

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