ニセモノ (玉置浩二のアルバム)

玉置浩二『ニセモノ』：異色の輝きを放つ問題作

『ニセモノ』は、日本の音楽シーンを牽引する玉置浩二が2000年に発表した8枚目のオリジナルアルバムです。本作は、単なるソロ作品という枠を超え、当時の玉置浩二の苦悩や葛藤、そして音楽への飽くなき探求心が色濃く反映された、異色の輝きを放つ作品として知られています。

制作の背景：安全地帯との軋轢

本作の制作は、元々安全地帯の新作としてスタートしました。しかし、レコーディングが進むにつれて、玉置浩二は自らの音楽性をより深く追求したいという欲求に駆られ、最終的に自らの手で全ての演奏を録り直すという決断を下します。この行為が、他の安全地帯メンバーとの間に大きな溝を生むこととなり、一時活動休止状態に陥る遠因となりました。

アルバムタイトルが『ニセモノ』と名付けられたのは、この経緯が大きく影響しています。安全地帯の作品として制作されたものが、玉置浩二のソロ作品として生まれ変わった、その複雑な背景を象徴していると言えるでしょう。

音楽性：大人のロック

『ニセモノ』の音楽性は、前作に続き、玉置浩二の歌唱力を最大限に活かした、落ち着いた雰囲気の「大人のロック」と評されます。シンプルなアレンジの中に、練り込まれたサウンドが光り、玉置浩二の情感豊かな歌声が、聴く者の心に深く響きます。

先行シングルとしてリリースされた「虹色だった」は、テレビドラマの主題歌として親しまれ、アルバムの代表曲の一つとなっています。また、「aibo」など、タイアップなしで収録された楽曲も、玉置浩二の音楽性の幅広さを感じさせる聴きごたえのある作品です。

レコーディング：軽井沢の自然の中で

レコーディングは、軽井沢にあるウッドストックスタジオで行われました。豊かな自然に囲まれた環境が、玉置浩二の創作意欲を刺激し、作品に深みを与えたと言えるでしょう。プロデューサーには、前作に続き須藤晃が参加し、玉置浩二との共同作業によって、独自の音楽世界が構築されています。

評価と影響

『CDジャーナル』は、本作を「シンプルながらも練りに練り抜いたサウンド」と評価し、「臨場感のある声が魅力の“大人のロック・アルバム”」と称賛しました。また、『TOWER RECORDS ONLINE』は、軽井沢のスタジオで製作されたことが「創作にもたらしたプラス面が色濃く表れた作品」と指摘し、そのソングライティング力と歌声を高く評価しています。

オリコンチャートでは最高位19位と、商業的には大きな成功を収めたとは言えませんが、その音楽性の高さと、制作背景にあるドラマ性から、現在でも多くの音楽ファンに愛され続けている作品です。

ツアーとその後

アルバムリリース後には、全国ツアー「Koji Tamaki CONCERT TOUR 2000 Super-T」が開催され、安全地帯のギタリストである武沢豊が参加しました。このツアーは、安全地帯の活動休止以来となる共演として、ファンにとって感慨深いものとなりました。

『ニセモノ』は、玉置浩二の音楽キャリアにおいて、重要なターニングポイントとなった作品と言えるでしょう。本作以降、玉置浩二はソロ活動を精力的に行い、安全地帯も活動を再開するなど、新たな展開を見せています。

まとめ

玉置浩二の『ニセモノ』は、単なるアルバムという枠を超え、アーティストの葛藤や音楽への情熱、そして人間関係の複雑さを描き出した、奥深い作品です。ぜひ、一度じっくりと聴き込んで、その魅力に触れてみてください。

収録曲
1. あの丘の向こうまで
2. ルーキー
3. Mr. Lonely
4. 夢のようだね
5. ひかり
6. aibo
7. 星になりたい
8. Don't wanna cry
9. 虹色だった
10. I LOVE YOUからはじめよう (Live Version)

もう一度検索