ニッケルハルパ

ニッケルハルパ：スウェーデンの伝統楽器

ニッケルハルパ（nyckelharpa）は、スウェーデンの伝統的な擦弦楽器です。日本語では「ニュッケルハルパ」とも呼ばれます。弓で演奏する楽器ですが、フレットの代わりに、弦を押さえる小さな金属片（タンジェント）が鍵盤のように並んでいるのが特徴です。そのため、鍵盤楽器と擦弦楽器の両方の要素を併せ持った、独特の楽器と言えるでしょう。

歴史：中世からの系譜と現代への進化

ニッケルハルパの起源は古く、ゴトランド島の教会のレリーフに、1350年頃と推定されるフィドル奏者の彫刻が見つかっており、これがニッケルハルパの起源を示唆する証拠とされています。16世紀から17世紀にかけては、ドイツで類似の楽器「Schlüsselfidel」が知られていました。

スウェーデンのウップランド地方は、16世紀末からニッケルハルパ音楽の中心地として栄え、1960年代には、ビス・カッレなど、多くの音楽家によるニッケルハルパ音楽のリバイバルが起きました。このリバイバルは、ニッケルハルパの演奏技術や楽譜の普及に大きく貢献しました。

楽器の改良も進みました。アウグスト・ボリーンは、1929年から1930年にかけて、ニッケルハルパをヴァイオリンに似た形状に改良し、半音階を演奏できるようにしました。

20世紀半ばには、エリック・サールストレムが重要な役割を果たしました。彼は優れた演奏家、指導者、作曲家、楽器製作者として活躍し、ニッケルハルパの普及に大きく貢献しました。ヴェーセンやヘドニンガルナといったフォークバンドでもニッケルハルパは重要な役割を果たしています。

そして2023年、ニッケルハルパの音楽と製作技術は、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。これは、ニッケルハルパがスウェーデンの文化遺産として、世界的に認められたことを意味します。

種類：多様な形態

ニッケルハルパには、キーの数、弦の数、配置、胴の形などによって、少なくとも4種類が存在します。現代のニッケルハルパは、共鳴弦を持つのが一般的です。共鳴弦は、弓で直接擦られない弦で、他の弦の音に共鳴することで、独特の音色を生み出します。歴史的にはドローン弦（常に一定の音を出し続ける弦）を持つものが好まれたようです。

ニッケルハルパを取り巻く環境

ニッケルハルパは、スウェーデンの伝統音楽を代表する楽器として、現在も愛され、演奏され続けています。その独特の音色と演奏方法は、多くの音楽愛好家を魅了し続けています。近年は、インターネットを通じて世界中にニッケルハルパの情報が拡がり、世界各国で演奏家や愛好家のコミュニティが形成されています。

日本でもニッケルハルパの演奏家が増え、演奏会やワークショップが開かれるなど、ニッケルハルパの文化が根付きつつあります。ニッケルハルパ協会や、楽器製作工房なども存在しており、日本におけるニッケルハルパの普及活動は活発に行われています。

まとめ

ニッケルハルパは、その歴史と独特の構造、そして世界的な認知度によって、スウェーデンの文化遺産として重要な地位を占めています。その音色は、時代を超えて人々の心を魅了し、これからも世界中で演奏され続けることでしょう。

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