ニテーシュ・ティワーリー

ニテーシュ・ティワーリーは、インド映画界、特にボリウッドで活躍する著名な映画監督、脚本家、そして作詞家です。1973年5月22日にマディヤ・プラデーシュ州イタルシのヒンドゥー教徒の家庭に生まれました。高等教育はインド工科大学ボンベイ校で受け、1996年に卒業しています。映画監督としてのキャリアを始める前は、広告業界でクリエイティブ・ディレクターとして働いており、特に大手広告代理店のレオ・バーネット社に在籍していました。私生活では、レオ・バーネットで同僚だったアシュヴィニー・アイヤール・ティワーリーと結婚し、現在は一男一女の父でもあります。

映画界での第一歩は、2011年に公開された『チラー・パーティー』でした。この作品ではヴィカース・バールと共同で監督を務め、脚本や原案、台詞も担当しました。子供たちを主人公にしたこの映画は、批評家からも高く評価され、国家映画賞の児童映画賞という栄誉ある賞を受賞しました。この成功により、ティワーリーは映画監督としての確かなスタートを切りました。

その後、ティワーリーは監督としての手腕をさらに磨きました。2014年に単独でメガホンを取った『Bhoothnath Returns』は、インド国内で興行的な成功を収めました。同年には『Kill Dil』、2016年には『ニュー・クラスメイト』、2017年には『バレーリーのバルフィ』といった作品で、主に脚本や台詞を手がけるなど、監督業と並行して脚本家としても精力的に活動を続け、その才能を発揮しました。

しかし、彼の名声を世界中に知らしめたのは、2016年に公開された『ダンガル きっと、つよくなる』です。インドの伝説的なレスラー、マハヴィル・シン・フォガートが娘たちを世界レベルのレスラーに育て上げる実話に基づいたこの作品で、ティワーリーは監督と脚本を務めました。公開後、『ダンガル』はインド国内で記録的な大ヒットとなり、その評判は国境を越えました。2017年4月には北京国際映画祭で上映され、同年6月には第2回BRICS映画祭でも紹介されるなど、国際的な舞台で高い評価を得ました。

『ダンガル』の興行収入は、当時のインド映画として前例のない規模に達しました。全世界での総興行収入は200億ルピーを超え、これは当時のインド映画史上最高額でした。特に驚異的だったのは中国市場での成績です。中国での興行収入だけで120億ルピーを稼ぎ出し、『ダンガル』は中国で最も成功した非ハリウッド外国映画の一つとなりました。この異例の成功は、ティワーリーのストーリーテリングと演出の力が、文化的な壁を超えて観客に響いたことを証明しました。

『ダンガル』の大成功により、ニテーシュ・ティワーリーはその卓越した映画製作能力を広く認められました。彼はこの作品によって、インド映画界で最も権威ある賞の一つである第62回フィルムフェア賞で監督賞を受賞しました。また、オーストラリアで開催されるインディアン・フィルム・フェスティバル・メルボルンでは、観客の支持を最も集めた作品に贈られるテルストラ・ピープルズ・チョイス・アワードを受賞するなど、多数の栄誉に輝きました。

『ダンガル』以降も、ティワーリーは創作活動を続けています。2019年には、受験生の苦悩と友情を描いた『きっと、またあえる』で再び監督・脚本を務め、その手腕を示しました。

広告業界で培ったクリエイティブな視点と、人間ドラマを描く繊細なタッチを併せ持つニテーシュ・ティワーリーは、現代インド映画界において欠かせない存在です。特に実話や社会的なテーマを扱いながらも、エンターテインメントとして観客を惹きつける作品を作り出す能力は高く評価されており、今後の活動にも大きな期待が寄せられています。

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