ニホンカワウソ

ニホンカワウソ

ニホンカワウソ（学名：Lutra nipponまたはLutra lutra whiteleyi）は、かつて日本全域に分布していたカワウソです。日本では1964年に天然記念物に、1965年には特別天然記念物に指定されたニホンカワウソは、1979年を最後に目撃されなくなり、2012年には環境省によって絶滅種として認定されました。

分布

明治時代まで、ニホンカワウソは北海道から本州、四国、九州の島々まで広く棲息していたとされますが、その後の乱獲や環境開発により急激に個体数が減少しました。特に1928年には狩猟の対象から外されましたが、逆にその後も減少傾向は続き、1950年代には本州および九州本土での個体群は絶滅したと考えられています。最後の確認例は和歌山県和歌山市で1954年に見られ、その後は愛媛県と高知県のみがニホンカワウソの生息地として残りましたが、1975年の愛媛県九島での捕獲が最後の生きた個体とされ、その後の確認は1979年に高知県須崎市でありました。

形態

ニホンカワウソは体長が64.5〜82.0cm、尾の長さが35〜56cm、体重は5〜11kgという特徴的なサイズを持ち、外観は韓国産のユーラシアカワウソに似ている部分もあります。特筆すべき点は、顔上方に配置された眼と鼻孔であり、これにより水面から警戒しながら周囲を観察することが可能でした。また、鼻孔は水中で閉じられるようになっており、狩りに特化した構造となっていました。毛皮は、外側が粗い差毛、内側が温かい綿毛でできており、寒い水中での体温維持に寄与していました。この美しい毛皮は乱獲の原因ともなった要素です。

生態

夜行性のニホンカワウソは、河川の中下流域や沿岸部に生息し、主に魚類やエビ、カニ、カエルなどを食べて生活していました。個体の行動範囲は十数kmにわたり、幾つかの「泊まり場」を持つことで知られています。繁殖は春から初夏にかけて行い、妊娠期間は約61〜63日で2〜5頭の仔を産むと考えられています。仔は生後約56日で巣を離れ、独立することが理論されています。ニホンカワウソは特に縄張りにこだわり、目立つ場所に糞をする習性がありました。

分類

ニホンカワウソは、ユーラシアカワウソの亜種として分類されることもあれば、別種として扱われることもあります。特に1990年代の研究で日本本土産の個体については独特の特徴が見つかり、独立した種とする説を支持しています。しかし、分類学的な議論は今も続いており、確固たる結論には至っていないのが現状です。

人間との関わり

ニホンカワウソは、地域の伝説や文化に深く根ざした存在でした。たとえば、アイヌ文化では「エサマン」と呼ばれ、特別な存在と見なされていました。しかし、明治から昭和初期にかけての乱獲や環境の変化は、その数を劇的に減少させました。特に、その毛皮や肝臓が薬用として重宝されることが乱獲を進めました。1940年代には捕獲数が激減し、最終的には絶滅の危機に瀕することとなりました。

絶滅の評価

ニホンカワウソは、2012年に絶滅種として認定されていますが、近年も幾つかの目撃情報が報告されています。それらは確証がないものの、専門家の中には生存の可能性を指摘する人もいます。特に、四国地方では数件の目撃情報が続き、保護活動が行われています。

そのため、ニホンカワウソは絶滅したとされる一方で、依然として人々の記憶の中で生き続けています。

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