ニマン川

ニマン川は、ロシア連邦のハバロフスク地方とアムール州にまたがる、ブレヤ川の右支流として知られています。この川は、かつて満州語などのトゥングース語では「オロンキ川（Olongki bira）」、漢語では「斡倫奇河」と呼ばれていました。これらの名前は、地域の歴史や文化を物語る重要な手がかりとなっています。

ニマン川は、全長353km、流域面積16,500㎢を有し、その源流はエソプ山にあります。この川は、この地域における水資源の重要な一部を形成しており、周辺の生態系にも大きな影響を与えています。17世紀には、この地域を支配していた清朝（ダイチン・グルン）の記録にもその存在が記されています。

清朝の記録によると、黒竜江城から丸木舟で約1ヶ月を要して、オロンキ川（ニマン川）とニオマン川（ブレヤ川）の合流地点に到達したとされています。この記録は、当時の交通手段や地理的な状況を理解する上で貴重な情報を提供しています。17世紀後半には、清朝の正黄旗蒙古都統ノミン、鑲紅旗蒙古副都統フワシャン、黒竜江副都統ナチンらによる調査が行われました。その結果は、清朝が作成した黒竜江流域地図（「ランタン地図」）にも反映されており、オロンキ川の位置と名称が正確に記されています。このことから、ニマン川が当時から重要な河川として認識されていたことがわかります。

この地域の歴史を語る上で、ニマン川は単なる地理的な存在以上の意味を持っています。川の名前の変遷や清朝の調査記録を通じて、この地域の歴史的な変遷、文化的な交流、政治的な支配といった様々な側面を垣間見ることができます。ニマン川は、その流れとともに、地域の歴史と文化を今に伝える貴重な存在と言えるでしょう。

参考文献としては、承志著『ダイチン･グルンとその時代』（名古屋大学出版会、2009年）や、松浦茂著『清朝のアムール政策と少数民族』（京都大学学術出版会、2006年）などが挙げられます。これらの文献は、ニマン川を含む地域の歴史や文化を深く理解するための重要な資料となります。

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