ニューヨーク (ドック型輸送揚陸艦)

USSニューヨーク（LPD-21）は、アメリカ海軍が誇るサン・アントニオ級ドック型揚陸艦の5番艦であり、その名はニューヨーク州に由来します。この艦名は、過去に5隻の艦が受け継いできた由緒あるものです。

9.11テロからの命名

2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件は、世界に衝撃を与えました。事件直後、ニューヨーク州知事であったジョージ・パタキは、テロの犠牲者への深い哀悼の意と、対テロ戦争への強い決意を示すため、当時の海軍長官ゴードン・イングランドに対し、水上戦闘艦に「USSニューヨーク」の名を命名するよう要請しました。知事は通常、州名は潜水艦に命名されることを理解していましたが、この特別な状況下での配慮を求めました。この要請は2002年8月28日に正式に承認され、艦名が決定しました。

ワールドトレードセンターの鋼材

「ニューヨーク」の建造には、ワールドトレードセンターの残骸から回収された約24トンもの鋼材が使用されました。そのうち7トンは溶解され、艦首の一部である「軸棒」として組み込まれています。この鋼材は、建造作業員たちによって、まるで宗教的な遺物に対するかのように、特別な敬意を払って扱われました。彼らはその傍らを歩く際、手で触れることで、犠牲者への追悼の意を表したと言われています。

建造と就役

2004年9月9日、海軍長官は、サン・アントニオ級の2隻が、9.11テロの犠牲者を追悼するため、「アーリントン」「サマセット」と命名されることを発表しました。「ニューヨーク」の建造契約は2003年にミシシッピ州パスカグーラのノースロップ・グラマン・シップ・システム社に発注されました。建造中には、ハリケーン・カトリーナの襲来に見舞われましたが、幸いにも大きな被害を受けることはありませんでした。そして2009年11月7日、「USSニューヨーク」はついに就役し、アメリカ海軍の一員としてその任務を開始しました。

「USSニューヨーク」は、単なる軍艦ではありません。それは、9.11テロの悲劇を乗り越え、不屈の精神で立ち上がったアメリカ国民の象徴であり、犠牲者への鎮魂と、未来への希望を込めたモニュメントなのです。

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