ニルマトレルビル

ニルマトレルビルについて

ニルマトレルビル（Nirmatrelvir）は、ファイザーが開発した抗ウイルス薬で、主に新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の治療に用いられます。この薬剤は3C様プロテアーゼを阻害する経口活性の薬です。具体的には、酵素の触媒システイン残基に直接結合し、阻害作用を発揮します。

治療効果

ニルマトレルビルは、リトナビルと組み合わせて使用されることで、COVID-19の治療において特に効果が確認されています。2021年11月には、症状が現れてから3日以内に投与することで入院が89%減少するという良好な結果が第2相・第3相試験で得られました。この実績に基づき、イギリスやオーストラリアでは本剤の備蓄や注文が始まっています。日本では2022年2月に特例承認を受け、商品名は「パキロビッドパック」として市場に出回ることになりました。

治療メカニズム

ニルマトレルビルとリトナビルの併用療法では、リトナビルがニルマトレルビルの代謝を遅らせることで、主成分の血中濃度を高く保つ役割を担います。この併用により、より効果的にCOVID-19の治療が可能になります。

開発の歴史

この薬剤の開発は、コロナウイルスのプロテアーゼがウイルスのポリプロテインの切断に関与していることに着目したものでした。初期の研究では、ヒトライノウイルスを利用し、ウイルスの切断に関与する残基の変更が可能であることが示されました。これを基に、他の病気に対しても開発が進められました。また、GC376という物質が猫のFIPVによる病気に効果を示したことで、3CLプロテアーゼをターゲットにした治療法の有用性が実証されました。

ファイザーのニルマトレルビルはGC373を基にした化合物で、初期の臨床候補薬であるPF-07304814を改良したものです。PF-07304814はその特性上、静脈内投与が必要で病院での使用に限られましたが、ニルマトレルビルは経口投与が可能なように設計されています。

日本における供給状況

2022年時点では、日本ではニルマトレルビルの一般流通は行われておらず、厚生労働省が管理する形で供給されていました。重症化リスクが高い患者にのみ提供され、医療機関も特定の条件を満たす必要がありました。それに続き、2023年3月15日からは公的医療保険の適用が始まり、薬価も設定されました。

「パキロビッドパック」の薬価は、300および600でそれぞれ12538.6円及び19805.5円ですが、政府の政策に基づき、当面は患者に対して無料で供給されることとなっています。医師による処方箋が引き続き必要な点も、使用の際の重要な条件となります。

結論

ニルマトレルビルは、新型コロナウイルスに対する効果的な治療薬としての地位を確立しつつあります。さらなる研究と供給体制の整備が進むことで、多くの患者にとって新たな治療の選択肢となるでしょう。

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