ニンカリ

ニンカリ：アイヌの伝統的な耳飾り

概要

ニンカリ（アイヌ語: ninkari）は、アイヌ民族において古くから伝わる金属製の耳飾りです。左右対にして耳たぶに装着され、日常的なアクセサリーとして男女問わず使用されていたほか、葬儀時の副葬品としても重要な役割を果たしてきました。一般的な形状は円形か「?」型で、サイズは直径約7〜8センチメートルが主流ですが、小型のものは3センチメートル程度から、大型のものは10センチメートルを超えるものも存在します。また、金属やガラス製の装飾玉や赤い布が付けられることもあります。

歴史的な変遷

ニンカリの起源は13世紀にさかのぼり、大陸から渡来したものがオホーツク文化を経て日本に伝わったと考えられています。最初期のニンカリは「Ω」型のデザインが主流であり、15世紀半ばまでその形状が一般的でした。この時期のニンカリは主に錫製でした。

その後、16世紀から17世紀にかけて「の」型や「C」型といった新しいデザインが登場し、17世紀半ばにはこれらが主流となります。この時期の素材は銀や四分一が主に使用されていました。さらに、18世紀頃には「?」型が現れ、19世紀に入ると耳飾りの端にガラス玉や金属玉を組み合わせるデザインが一般化します。この時代には洋銀が普及し、ニッケルメッキ製のものも見られるようになりました。

同化政策と現代

明治時代に入り、1871年には開拓使が男性の耳飾りの着用を禁止する同化政策が施行されました。この影響を受けて、ニンカリの使用は急激に減少しましたが、現在でもその形状やデザインはアイヌ文化を象徴する重要なアイテムとして尊重されています。現在のアイヌの人々は、小型のニンカリを鉢巻きに縫い込んだり、ピアスのようなサイズ感で身に着けることがあるようです。

まとめ

ニンカリは、その美しいデザインと深い歴史的背景から、アイヌ文化の重要な象徴となっています。アイヌの人々の生活には欠かせないアクセサリーであり、今もなお、彼らの文化を継承する大切な役割を果たしていることが伺えます。各時代の変化を経ながらも、ニンカリはアイヌのアイデンティティを支える存在として、今後も大切にされていくことでしょう。

参考文献

• - 関根達人『つながるアイヌ考古学』新泉社、2023年。ISBN 978-4-7877-2316-1。
• - 亀丸由紀子「アイヌ民族の耳飾りに関する基礎的研究-国内博物館等収蔵資料を中心として」『北海道博物館アイヌ民族文化研究センター研究紀要』第5巻、北海道博物館、2020年。
• - 関根達人、菊池勇夫、手塚薫 ほか 編『アイヌ文化史辞典』吉川弘文館、2022年。ISBN 9784642014809。

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