ニンフェンブルク宮殿

ニンフェンブルク宮殿：バイエルンの夏の夢

ニンフェンブルク宮殿は、ドイツ・バイエルン州の州都ミュンヘンに佇む、壮麗なバロック様式の宮殿です。「ニンフ（妖精）の城」を意味するその名の通り、優雅で美しい雰囲気をたたえています。かつてバイエルン選帝侯の夏の居城として使用され、現在は観光名所として一般公開されています。

歴史

宮殿の歴史は17世紀に遡ります。1662年に選帝侯フェルディナント・マリアの息子、マクシミリアン2世エマヌエルが誕生したことを記念し、1664年にイタリア人建築家アゴスティーノ・バレッリによって設計されました。当初は中央の建物のみでしたが、マクシミリアン2世エマヌエルの時代に体系的な拡張が行われ、南北に建物が追加されました。さらに、南側には厩舎、北側には温室（オランジェリー）が建設され、現在の壮大な姿へと発展しました。

18世紀には、ヨゼフ・エフナーが中央の建物のファサードをフレンチ・バロック様式に再設計し、レオ・フォン・クレンツェがアテネ風の装飾を施しました。また、1741年には、この宮殿でニンフェンブルク条約が締結され、カール・アルブレヒトがオーストリアに対抗してフランスおよびスペインと同盟を結びました。

宮殿はその後もバイエルンの支配者たちの夏の居城として使用され、初代バイエルン王マクシミリアン1世が1825年に、ルートヴィヒ2世が1845年にこの地で生を受けました。現在、宮殿はヴィッテルスバッハ家の個人所有でありながら、一般公開されています。

宮殿の内部

宮殿の内部は、バロック、ロココ、新古典主義など、様々な様式が混ざり合った豪華な空間となっています。中でも圧巻は、祝宴広間である「石のホール (Steinerner Saal)」です。ヨハン・バプティスト・ツィンマーマンによるフレスコ天井画とフランソワ・ド・キュヴィイエによる装飾は、訪れる人々を魅了します。

南の建物にある「美人画ギャラリー」には、ルートヴィヒ1世が集めた美しい女性たちの肖像画が展示されています。また、この建物にはルートヴィヒ2世が生まれた部屋も残されています。

かつて厩舎だった建物は、「馬車博物館 (Marstallmuseum)」として公開されており、神聖ローマ皇帝カール7世の戴冠式で使われた馬車や、ルートヴィヒ2世の豪華な馬車やソリなどが展示されています。また、同じ建物内には、ニンフェンブルク陶磁器のコレクションも展示されており、マクシミリアン3世ヨーゼフが作らせたニンフェンブルク陶器の工房で作られた、高品質な陶磁器の数々を見ることができます。

広大な庭園

宮殿を取り囲む20ヘクタールもの広大な庭園は、様々な様式が融合した美しい空間です。当初はイタリア式庭園として造られましたが、後にフランス式庭園に作り変えられ、19世紀初頭にはイギリス式庭園へと姿を変えました。庭園内には、ギリシア神話の彫刻が並ぶ道や運河、湖などがあり、四季折々の風景を楽しむことができます。

庭園内には、パゴダの小城 (Pagodenburg)、バーデンブルク (Badenburg)、マグダレーナの庵 (Magdalenenklause)、アマリエンブルク (Amalienburg)などの歴史的な建造物が点在しています。中でも、フランソワ・ド・キュヴィイエが手掛けたロココ様式の狩猟小屋であるアマリエンブルクは、ヨーロッパ・ロココ建築の傑作として知られています。

庭園の北側の森の小路を抜けていくと、ミュンヘン＝ニンフェンブルク植物園があり、様々な植物を観察することができます。

観光情報

ニンフェンブルク宮殿は、ミュンヘンの主要な観光名所の1つであり、年間30万人以上が訪れます。宮殿へは、ミュンヘン市内の主要駅から市電17番Amalienburgstrasse方面行きに乗車し、約20分でアクセスできます。

アラン・レネの映画『去年マリエンバートで』のロケ地としても知られるこの宮殿で、歴史と芸術に触れる旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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