ニース条約

ニース条約：EU拡大に向けた複雑な改革

ニース条約は、2000年12月に合意され、2003年2月1日に発効した欧州連合（EU）の基本条約改正条約です。ローマ条約とマーストリヒト条約を修正し、EU拡大に伴う機構改革を主な目的としています。アムステルダム[[条約]]では不十分だった拡大への対応策を補完する役割を果たしました。

条約の主要内容

ニース条約の核心は、EU拡大に対応した機構改革にあります。特に、加盟国の投票権配分と意思決定プロセスに関する調整が焦点となりました。ドイツは人口比を反映した配分を求めましたが、フランスはドイツとの影響力均衡を主張し、対立しました。最終的には、加盟国の投票数と人口比の両方を考慮した二重多数決方式で妥協が成立しました。

また、将来の拡大を見据え、欧州議会の議員定数を732に増員しました。これはアムステルダム[[条約]]の定数では対応できないためです。欧州委員会の委員数については、加盟国数27カ国到達時には同数とし、その後は27カ国未満に削減する暫定措置を採りました。しかし、これは真の削減策とはみなされておらず、その後、主要国の委員数を削減する措置が取られています。

さらに、欧州司法裁判所への専門法廷設置、緊密協力に関する規定の導入、加盟国に対する制裁措置の規定追加、EU石炭鉄鋼共同体の消滅に伴う財政措置など、多岐にわたる項目が含まれています。

しかし、ニース条約はEUの機構制度を根本的に改革したわけではありません。複雑な制度構造ゆえ、2004年の政府間会議（IGC）に向けたコンベンション（協議会）設立が合意されました。欧州議会は、提案が十分に取り入れられなかったことへの不満から、対抗案を採択する構えを見せましたが、最終的には条約を受け入れました。

批准過程におけるアイルランドの抵抗

ニース条約の批准は、アイルランドでの国民投票の結果、最初の試みでは否決されました。投票率の低さや、主要政党の不熱心な議論、条約内容への不満、小国軽視の懸念、アイルランド中立性への疑念などが、否決の背景にあります。この結果は、EU統合を推進してきたヨーロッパの政界に衝撃を与えました。

アイルランド政府は、セビリア宣言（アイルランドの軍事政策への配慮）を踏まえ、再国民投票を実施しました。今回は、「緊密協力」に関する議会の承認、アイルランドのEU共通防衛政策不参加を条件に、大規模な賛成運動が展開され、60%の賛成を得て批准が完了しました。

ニース条約の評価と今後の課題

ニース条約は、EU統治機構の効率化、中欧地域への拡大促進に貢献したと評価されます。特に旧共産圏諸国の統合と将来の発展に重要な役割を果たしました。しかし、多くの者はEUの権限強化には不十分と見なし、憲法制定や連邦制への移行を望んでいます。

反対意見としては、民主主義的ではなく、主権や議会の機能を弱め、官僚制に権限を集中させるとして、批判する声があります。また、加盟申請国の選別における不公平さや、大国による有利な政策実施の可能性、EU域内の格差拡大などが懸念されています。もしアイルランド以外で国民投票が行われていたら、同様の結果になった可能性も指摘されています。

ニース条約は、EU拡大をスムーズに進めるための重要な一歩でしたが、同時に、EUの将来像をめぐる複雑な課題を浮き彫りにした条約と言えるでしょう。その後のEU憲法制定議論へとつながる重要な転換点となりました。

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