ヌト (小惑星)

小惑星ヌト（306367 Nut）

小惑星ヌト（Nut）は、国際天文学連合が公認する小惑星番号306367を持つ天体です。その仮符号は5025 P-Lとされており、太陽系の小天体の中でも地球に接近する軌道を持つ「地球近傍天体」の一つであり、特に「アポロ群」に分類されます。

命名の由来

この小惑星の名前は、古代エジプト神話における重要な神格の一人、天空神ヌトにちなんで名付けられました。ヌトは大地神ゲブの妻であり、天を司る存在として描かれます。

特異な軌道特性

ヌトの軌道は、太陽系内の複数の惑星軌道を横断するという特徴を持ちます。太陽に最も近づく点である近日点は、金星の軌道よりも内側に位置することがあり、逆に太陽から最も遠ざかる点である遠日点は、火星の軌道を大きく超え、時には木星軌道付近にまで達します。このような軌道を取ることから、ヌトは地球を含む太陽系の主要な惑星や、他の小惑星と比較的近い距離を通過する可能性があります。これは、将来的にこれらの天体と重力的な相互作用を起こしたり、極めて低い確率ながら衝突の可能性も示唆されるため、天文学的な観測が続けられています。

将来の接近予測

ヌトが将来、地球や他の天体に最も接近すると予測されているいくつかの事例が報告されています。これらの予測は、天体の軌道要素に基づいた精密な計算によって導き出されます。

地球への接近：2052年11月21日には、地球から約1180万キロメートル（天文単位で約0.0791AU）まで接近すると予測されています。
金星への接近：比較的近い過去の事例としては、2000年6月28日に金星から約644万キロメートル（約0.0431AU）まで接近したことが挙げられます。
木星への接近：将来の接近としては、2128年2月14日に木星から約2億4900万キロメートル（約1.6622AU）まで接近する見込みです。
小惑星パラスへの接近：主要な惑星以外では、小惑星帯で最大の小惑星の一つであるパラス（Pallias、小惑星番号2）にも接近する予測があります。2104年10月15日には、パラスから約747万キロメートル（約0.0500AU）まで近づくとされています。

これらの接近予測は、ヌトの軌道が様々な天体の重力によって影響を受ける可能性を示しており、その動向を理解する上で重要な情報となります。地球近傍天体としてのヌトは、太陽系内の天体の動態を研究する上で興味深い対象であり続けています。

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