ヌーリスターン州

ヌーリスターン州について

アフガニスタン東部に位置するヌーリスターン州は、険しい山々に囲まれた地域です。その地理的特徴から、厳しい自然環境と歴史的な背景が複雑に絡み合っています。

地理と気候

ヌーリスターン州は、ヒンドゥークシュ山脈の山中に位置し、標高4,000メートルを超える山々が連なっています。アリーンガール川やペーチ川などの河川が流れ、ラグマーン州やクナル州へと続いています。冬は非常に寒く、雪崩が頻発します。2017年には大寒波により、多数の死者が出るなど、自然災害による被害が深刻です。

歴史

ヌーリスターン人は、インド・ヨーロッパ語族の末裔と考えられています。かつては「カーフィリスターン（不信仰者の地）」と呼ばれ、アニミズムを信仰する人々が暮らしていました。19世紀後半、アブドゥッラフマーン・ハーンによって征服され、住民はイスラム教に改宗させられました。同時に、この地は「光の地」を意味するヌーリスターンと改名されました。

冷戦時代には、ソ連のアフガニスタン侵攻に伴い、ゲリラ活動が活発な地域となりました。特に1981年頃には、ムジャーヒディーンの活動が盛んで、地域は半独立状態にありました。1988年に、ラグマーン州とクナル州の一部から独立し、州となりました。

2001年のアメリカ同時多発テロ事件後には、ターリバーンなどの反政府勢力が国境地帯でゲリラ活動を展開し、アメリカ軍との戦闘が頻発しました。2008年には、アメリカ軍がワーイガル郡から撤退する事態も発生しています。

政治と治安

現在でも、ヌーリスターン州は不安定な状態が続いています。反政府勢力が一部の郡を掌握しており、治安部隊の人員不足や腐敗も深刻です。住民は病院や道路整備の遅れに不満を抱いています。州内では、度々選挙が実施されていますが、投票率も低く、政治情勢は不安定です。

行政区分

ヌーリスターン州は、州都であるパールーンを含む1市7県で構成されています。各郡には、カム族、カタ族、アスコリ族など、異なる民族が居住しています。

産業

農業が主な産業ですが、生産量は低い傾向にあります。特に小麦や大麦の生産量は全国的に見ても最低レベルです。トウモロコシ、リンゴ、桃などの生産も平均を下回っています。

交通

幹線道路は州外までしか通っておらず、州内の道路状況は非常に悪いです。大部分の道路は自動車が通行できず、年間を通して通行可能な道路はごくわずかです。中央政府による道路整備も進められていますが、遅延が目立っています。

住民

ヌーリスターン州には、カタ族やカルシャ族など、複数の民族が暮らしています。ヌーリスターン語が主要言語で、パシャイ語も話されています。識字率は低く、教育水準の向上が課題となっています。

宗教

住民の多くはイスラム教を信仰しています。

文化と芸術

ラドヤード・キプリングの小説や、ショーン・コネリー主演の映画など、ヌーリスターンを舞台にした作品も存在します。

今後の課題

ヌーリスターン州は、自然災害、紛争、貧困など、多くの課題を抱えています。インフラ整備や治安の安定化、教育の普及など、多岐にわたる分野での改善が求められます。

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