ネイピア・アンド・サン

D.ネイピア・アンド・サンの歴史と影響

D.ネイピア・アンド・サン（D. Napier & Son Limited）は、英国における自動車および航空用エンジンの重要な製造会社として、19世紀末から20世紀前半までの盛世を築き上げました。本記事では、同社の起源から第一次世界大戦後の展開、さらにはその後の進化を辿ります。

初期の歴史

創業者デイビッド・ネイピアは1785年、アーガイル公爵に仕える鍛冶屋の家庭に生まれました。彼はスコットランドで技術者としての教育を受けた後、1808年にロンドンに会社を設立。蒸気機関を用いた印刷機を設計し、英国議会の記録を出版するハンサードに納入するなど、業績を上げました。1830年にサウスロンドンのランベスへ移転すると、製糖工場向けの遠心分離器や弾薬製造設備を生産し、1850年代までには200人から300人の従業員を抱えるまでに成長しました。

1867年には息子のジェイムズが父親の後を継ぎ、社長に就任。彼は会社を通じて精密機械の製造へとシフトしましたが、ビジネスとしては不運が続き、会社は1895年には従業員が7人にまで減少しました。ジェイムズの息子モンタギューはその後、会社を再建する新たなリーダーとして台頭します。

自動車の製造とレース活動

モンタギューは、アマチュアレーサーとしての経験を背景に、ネイピアでの自動車製造に乗り出すことにしました。1900年には、エッジと共に自動車の設計に成功し、初期には高性能車両を多数製造し、特にエッジが操縦した8hp車は王立自動車クラブのトライアルレースでの成功により、名声を得ました。

1912年以降、ネイピアはタクシー向けに大量生産を行い、自動車の生産は継続されました。特に、ライオンエンジンの設計者A.J.ロウリッジが手がけたモデルは注目を集め、1924年までの総生産台数は4,258台に達しました。1920年代の初めには、この業績の集大成として1904年にカナディアンロッキーを横断した自動車でも名声を博しました。

空軍への貢献

第一次世界大戦中、ネイピアは多くの航空機を供給し、戦後にはエンジンの設計をし、W型12気筒のライオンエンジンが成功を収めました。このエンジンは、マルコム・キャンベルなどのプロジェクトで数多くの速度記録に貢献しました。

1919年、民生用のT75モデルの自動車の生産を再開しましたが、これらは高価だったため売上は沈静化。1924年には自動車生産から撤退しました。

戦後の技術革新と変化

1930年代には新しい航空機用エンジンの設計に取り組み、しかし競合製品の登場に伴い、当初の成功を維持するのは難しくなりました。第二次世界大戦中には新たなスリーブバルブ方式を採用したセイバーエンジンを開発しましたが、大量生産は1944年までかかりました。

最後の挑戦とその後

戦後、ネイピアはジェットエンジンの設計に注力し、一部製品は成功を収めましたが、1970年代には新たな大型エンジンの供給を終え、その後もターボチャージャーの製造へと業種を転換しました。

1960年代後半から、ネイピアはイングリッシュ・エレクトリックの一部となり、最終的にはジーメンスの傘下に入るなど、企業としての移り変わりを続けましたが、今日では主にターボチャージャーを製造しています。

以上が、D.ネイピア・アンド・サンの時代を超えた歴史の概要です。この会社の製造したエンジンと自動車は、今も多くの技術者や歴史ファンに影響を与え続けています。

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