ネコザメ

ネコザメ (Heterodontus japonicus)

ネコザメ（猫鮫、英名：Japanese bullhead shark）は、ネコザメ目ネコザメ科に属し、日本周辺の海域に広く分布するサメの一種です。このサメは、別名でサザエワリとも知られており、日本近海に生息するネコザメ科の代名詞的存在です。日本には他にもシマネコザメ（H. zebra）が存在しますが、こちらは比較的稀少です。

分布・生息域

ネコザメは太平洋北西部に生息し、日本国内では北海道を除く南の沿岸地域で見受けることができます。さらに、朝鮮半島や東シナ海の沿岸でも確認されており、主に水深6から37メートルの浅い海底付近に見られ、岩場や海中林を好む傾向があります。

形態

最大全長は約120センチメートルで、2基の背鰭が特徴的です。特にこの背鰭の前端には鋭い棘があるため、幼魚は大型の捕食魚から身を守るのに役立っています。また、体型は円筒状で、薄褐色の皮膚には、縁がぼやけた11〜14本の濃褐色の横帯が入っています。吻は尖っておらず、眼の上には特徴的な皮膚の隆起があります。この隆起は和名では「ネコの耳」、英名では「ウシの角」と形容されています。歯に関しては、前歯が棘のような形状で、後歯は臼歯のようになっており、頑丈な循鱗を持っています。

生態

ネコザメは底生性であり、岩場や海藻の生息地に住んでいます。主に、硬い貝殻を持つサザエやウニ、甲殻類を捕食し、臼歯状の後歯で貝殻を砕くことから、サザエワリ（栄螺割）とも呼ばれることがあります。日中は海藻や岩の隙間に隠れ、夕暮れから夜間にかけて活発に餌を探す夜行性です。泳ぎが苦手であるため、胸鰭を使って海底を這うように移動することもあります。

ネコザメは卵生であり、日本では3月から9月にかけて産卵が行われ、そのうち3月から4月が最も多くの卵が産まれる時期です。一度に2個ずつ、トータルで6〜12個の卵を産む雌は、卵を岩の隙間や海藻の間に固定するために、螺旋状のひだに包んだ卵を産み落とします。仔魚は卵の中で約1年かけて成長し、約18センチメートルで孵化します。また、雄はおおよそ69センチメートルで成熟します。

人との関わり

ネコザメは漁業の際に刺し網などで混獲されることがありますが、水産業には特に重要な存在ではありません。日本の和歌山地域では、湯引きなどとして食用にされることがあり、酢味噌であえられることもあります。また、水族館での飼育や展示も行われており、特に下田海中水族館（静岡県下田市）では、ネコザメの繁殖で賞を受賞した実績があります。個体が小さいうちは観賞用として一般家庭での飼育も可能です。ネコザメは通常、人に対して危険を及ぼすことはありません。

このように、ネコザメは日本近海の生態系の一部として、また観賞の対象としても、多くの人々に親しまれています。

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