ネズ・パース

ネズ・パース族：コロンビア高原の誇り高き人々

ネズ・パース族は、アメリカ北西部に暮らすアメリカンインディアンの一民族です。アイダホ州を中心に、ワシントン州、オレゴン州、モンタナ州といったロッキー山脈周辺のコロンビア高原に居住地を構え、独自の言語と文化を現在も保持しています。彼らは自分たちのことを「ニミプー」や「カムイヌ」、「チュトペリ」と呼び、ペヌティ大語族サハプティン語族に属するネズパース語を話します。

豊かな自然と共存した生活

伝統的に、ネズ・パース族は狩猟採集と農業を営む生活を送っていました。バッファローやシカなどの大型哺乳類を狩り、川では鮭を捕獲、森ではベリー類などの野生の果実を採取していました。また、トウモロコシなどの農作物を栽培し、自然の恵みと共存する生活を築き上げてきました。

白人との複雑な関係

ネズ・パース族は、初期の白人探検家たちとの接触において、その友好的な態度で知られていました。1805年のルイス・クラーク探検隊との出会いを記した記録には、彼らの穏やかで落ち着いた性質が賞賛されています。しかし、この友好的な関係は、長くは続きませんでした。19世紀中頃以降、白人の開拓が進み、ネズ・パース族の土地は徐々に侵食されていきます。

1855年、不平等な条約によって、ネズ・パース族は彼らの伝統的な土地の大部分を奪われ、限定された保留地に押し込められました。その後、保留地内で金が発見されると、ゴールドラッシュが起き、白人の流入はさらに激化します。金が採掘されつくした後も、白人たちは土地を離れず、ネズ・パース族との摩擦は増していきました。1863年には、保留地の面積が大幅に縮小されるという不当な条約が提示され、部族内部にも対立が生じました。

ジョゼフ酋長と108日間の逃避行

1877年、ネズ・パース族の指導者ヒンマラー・トーヤラケット（白人から「ジョゼフ」と呼ばれた）酋長は、部族民の一部の白人襲撃をきっかけに、カナダへの逃亡を決意します。この逃避行は、108日間にも及ぶ過酷なもので、2700キロもの距離を移動しました。ジョゼフ酋長の優れた指導力と戦略的な判断は、白人から「赤いナポレオン」という異名を与えられるほどでした。しかし、最終的には捕らえられ、ワシントン州コルビルの保留地に幽閉されました。彼は生涯、故郷への帰還を望みましたが、その願いは叶うことはありませんでした。彼の死因は「傷心による死」と記録されています。

現代のネズ・パース族

現在、アイダホ州北部とモンタナ州には、北部ネズ・パース族と南部ネズ・パース族の二つの部族が約600人ほど暮らしています。彼らは先祖代々の文化を継承しながら、現代社会の中で独自のアイデンティティを維持しようと努力しています。ネ・ペルセ国立歴史公園は、彼らの歴史と文化を伝える重要な場所となっています。

狼の保護活動

かつて狼を崇拝していたネズ・パース族は、現在、絶滅した狼の自然界復帰計画に積極的に関わっています。アイダホ州北部とモンタナ州の依頼を受け、「狼の教育と調査センター（WERC）」として、野生復帰したオオカミの監視や管理を行っています。しかし、この活動は牧場主やハンターからの反発を受けており、将来は不透明な部分も残されています。

ネズ・パース族の歴史は、自然との共存、そして白人との複雑な関係、そして現代社会における課題を浮き彫りにするものです。彼らの物語は、アメリカの歴史における重要な一章であり、私たちに多くのことを教えてくれます。

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