ネド・ブロック

ネド・ブロック：意識と認知科学の先駆者

ネド・ブロック（Ned Block、1942年 - ）は、現代哲学において心の哲学、意識、認知科学、知覚の哲学といった分野で重要な貢献をしている哲学者です。長年にわたりマサチューセッツ工科大学（MIT）で教鞭を執り、現在はニューヨーク大学（NYU）のシルバー教授として、哲学科、心理学科、神経科学科で教鞭を執っています。彼の哲学理論は神経科学者や心理学者によって検証され、新たな理論構築の基盤となるなど、科学者との密接な連携を築いている点が特徴です。

経歴

1964年にMITで物理学と人文科学の学士号を取得後、ヒューバート・ドレイファス、ジェリー・フォーダー、ヒラリー・パトナムの影響を受け哲学に転向。1971年にヒラリー・パトナムのもとハーバード大学で博士号（PhD）を取得しました。学生時代にはマルコムXとの交流もあったそうです。MITでは助教授、准教授、教授を歴任し、1989年から1995年まで哲学科の主任を務め、同科を全米トップレベルにまで発展させました。1996年からはNYUで教鞭を執り、哲学、心理学、神経科学の分野で後進の育成に尽力しています。NYUの哲学科は、グルメ・リポートで全米1位、QS World University Rankingsで世界1位に認定されるなど、国際的にも高い評価を受けています。

2013年にはジャン・ニコ賞を受賞。また、2012年にハーバード大学でウイリアム・ジェームズ・レクチャー、2013年にはオックスフォード大学でジョン・ロック・レクチャーを行うなど、その業績は広く認められています。哲学および心理学学会の会長も務め、2004年にはアメリカ芸術科学アカデミーのフェローに選出されました。チューリング・テストの人間らしさを競うローブナー賞の審査員も務めています。ハーバード大学教授で発達心理学者のスーザン・ケアリー（Susan Carey）と結婚しています。

思想

ブロックは、1978年の論文「機能主義のトラブル」（Troubles with functionalism）で、心の哲学における機能主義の限界を指摘しました。彼は、人間と同じ機能状態を持つシステムであっても、必ずしも意識を持つとは限らないと主張し、意識の存在には機能以上の要素が必要であることを示唆しました。また、1981年の論文「心理学主義と行動科学主義」（Psychologism and Behaviourism）では、チューリング・テストに対する反論として「ブロックヘッド」という思考実験を提示し、知性テストとしてのチューリング・テストの妥当性に疑問を投げかけました。

意識に関して、ブロックは現象意識（phenomenal consciousness）とアクセス意識（access consciousness; cognitive access）を区別しています。現象意識は主観的な経験や感覚を指し、アクセス意識は認知システムが推論、発話、高レベルの行動形成を行う際に利用可能な情報を指します。ジョージ・スパーリングらの心理学実験に基づき、現象意識は視覚野に、アクセス意識はワーキングメモリに存在し、両者の間には情報のオーバーフローがあるとし、必ずしも重なり合わないと主張しています。この区別は、意識の研究において重要な概念となっています。

職歴

哲学及び心理学教授、ニューヨーク大学 (NYU) 1996 - 現在
哲学プログラム主任、マサチューセッツ工科大学 (MIT) - ?- 1996年

受賞・フェローシップ

米国芸術科学アカデミー（American Academy of Arts and Sciences）フェロー
グッゲンハイム・フェロー
言語情報学研究所シニア・フェロー
スローン財団フェロー
American Council of Learned Societiesのフェローシップ
米国科学財団のフェローシップ

その他

哲学心理学学会元会長
MIT出版の認知科学評議会元主任
国際意識科学会（Association for the Scientific Study of Consciousness）元会長
The Nature of Consciousness: Philosophical Debates (MIT Press, 1997)共同編集人

ネド・ブロックは、意識と認知科学の分野において、その独創的な思考と科学者との積極的な交流を通じて、多大な影響を与え続けている哲学者です。

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