ネフェルティティの胸像

ネフェルティティの胸像

『ネフェルティティの胸像』は、古代エジプト第18王朝のファラオ・アメンホテプ4世の正妃、ネフェルティティを模した著名な彩色石灰岩の彫刻です。この作品は古代エジプトの美術における頂点の一つで、女性美の象徴としても広く認知されています。この胸像は、紀元前1345年に古代エジプトの彫刻家トトメスによって制作されたとされ、今もなお多くの人々を惹きつけ続けています。

歴史的背景

ネフェルティティの名前は「美しい人の訪れ」という意味を持ち、紀元前14世紀にアメンホテプ4世と共にエジプトを治めていました。アメンホテプ4世は、太陽神アテンを唯一神とする新しい宗教を打ち立てましたが、ネフェルティティに関する詳細な記録は非常に乏しいです。彼女は異なる王国からの王女だったのか、それともエジプト王家の一員だったのかは定かではありません。ネフェルティティはアメンホテプ4世との間に6人の娘をもうけ、その一人は後にツタンカーメンの妃となりますが、彼女自身の運命に関する情報は少なく、歴史の中で彼女の存在は不明瞭な部分が多いです。

発見の経緯

この胸像は1912年12月6日に、ドイツ・オリエント協会の考古学者ルートヴィヒ・ボルヒャルトの主導下、ナイル川付近のアマルナで発見されました。彼はトトメスの工房跡から多くの未完成の作品と共にこの胸像を掘り出しましたが、発見時にはその真の価値が知られていなかったため、そのやり取りは後々物議を呼ぶことになります。ドイツ政府への報告では、発見された作品の価値を軽視し、しかるべき権利を逸脱した取引疑惑が浮上しました。これにより、胸像は「略奪された美術品」としても知られるようになりました。

ドイツでの保管

『ネフェルティティの胸像』はベルリンへと運ばれ、発見後すぐに多くの人々の視線を集めました。しかし、1945年の第二次世界大戦やその後の冷戦時代を経て、数回の移動と展示を繰り返すことになりました。胸像は1945年にアメリカ軍によって発見され、その後、アメリカの美術館で公開されることとなりましたが、最終的には再びベルリンの美術館へ帰ってきました。

返還問題

胸像の返還問題は1960年代から続いており、現在もさまざまな国際的議論の対象となっています。エジプト側は、胸像を発見時に不正に持ち出されたと主張し、何度も返還を求めていますが、ドイツ側は胸像の保護のため返還は不可能であると反論しています。文化財としての重要性が高く、特にナショナルアイデンティティに関連付けられているため、この問題は敏感なものとなっています。

外観と技術

胸像は高47cm、重さ約20kgで、石灰岩でできており、華やかな彩色が施されています。特に、右目の象嵌や特徴的な王冠は一見の価値があります。この胸像からは、古代エジプト芸術のスタイルを強く感じることができ、また現代の学術研究によってもその美しさや技術力が証明されています。特に、胸像の左目が欠落していることは多くの考古学的議論を引き起こしていますが、様々な解釈が存在します。

美術作品としての評価も高く、無数の模倣や影響を与えてきた『ネフェルティティの胸像』は、現在でも古代エジプトの重要な文化財として広く認識されています。

もう一度検索