ネリカ

ネリカ（NERICA）について

ネリカ（NEw RICe for Africa）は、アフリカの食糧事情を改善するために開発されたイネの品種群です。この品種は、アジアイネ（Oryza sativa）を母体に、アフリカ[[イネ]]（Oryza glaberrima）の花粉を掛け合わせたことで誕生しました。ネリカは、高収量性を持ちながら、耐乾燥性や耐病虫性といった特性を備えており、2008年時点ではすでに18の陸稲品種が普及しています。また、水稲についても普及が進み、さらなる生産性の向上が期待されています。

開発の背景

1970年代以降、アフリカのサハラ砂漠以南の地域では、米が重要な食糧としての役割を果たすようになりました。国際食糧政策研究所の報告によれば、イネは生産者にとって大きな利益をもたらす作物であり、地域の戦略的な生産品として重要視されています。しかし、生産量は増加しているものの、個人あたりの消費も増加し続け、他地域からの輸入依存が続く状況です。このような背景から、育種を通じた米の増産を目指し、従来のイネの品種改良では満たせなかった特性を持つネリカの開発が始まりました。

特長

ネリカには以下のような特長があります。

• - 高い収量性：肥料を施さない場合でもアフリカ[[イネ]]よりも収量が50%多く、肥料を与えると最大200%以上の増収が期待できます。
• - タンパク質含量：ネリカは、元となるアフリカ[[イネ]]やアジアイネよりも2%多くのタンパク質を含有しています。
• - 短い栽培期間：アジアイネが120-140日かかるのに対し、ネリカの栽培は90-100日とされています。ただし、初期段階での生育速度が遅く、雑草との競争優位性には課題があります。
• - 耐性：乾燥や病害虫に対する耐性を持ち、劣悪な環境にも強い作物です。

普及活動

ネリカの普及は、アフリカ稲センター（当時の西アフリカ稲開発協会）による農民参加型の品種選択法（PVS）を通じて行われています。この方法は1994年にコートジボワールで始まり、農民が自ら選定する機会を設けています。農民たちは試験圃場で数十品種を栽培し、その成長過程を観察し、最終的には自分の畑で試験栽培を行うことで評価を行います。2006年には、ウォーダ（WARDA）とアフリカ稲イニシアティブが種子の生産・配布を担当しました。

品種開発過程

アフリカ[[イネ]]は3500年以上前から現地で品種化されてきましたが、収量や管理の面ではアジアイネが優れています。そのため、ネリカは、アフリカ[[イネ]]とアジアイネの交雑から育成されました。交雑を行う前に、1130系統のアフリカ[[イネ]]を栽培し、特性を評価した結果、8系統を選び出しました。1992年には、陸稲タイプのアジアイネを母にして交雑を進め、胚培養を用いて雑種を作り出しました。さらに、交雑を繰り返し行い、優れた特性を持つ系統が選ばれ、農民参加型の品種選択法を経てネリカ品種群として普及されていきました。

低地用ネリカ（水稲）

陸稲の栽培では土壌の疲弊が問題になりますが、低地用ネリカ（水稲）は、適切な施肥を行うことで連作が可能です。アフリカでは、在来の水稲が収量面で課題に直面していましたが、開発された低地用ネリカはより高い収量を持ち、1ヘクタールあたり6-7トンが期待できます。

このように、ネリカはアフリカの食糧状況を改善するための重要な一手となっており、その普及と発展が期待されています。

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