陸稲

陸稲（おかぼ）とは

陸稲（りくとう/おかぼ）は、畑で栽培されるイネのことで、野稲（のいね）とも呼ばれます。水稲（すいとう）と比較して、より乾燥した環境に適応したイネとされていますが、植物学的な差異はありません。古くから栽培されてきたものもあれば、水稲から品種改良されたものもあります。

概要

陸稲は水稲に比べて草丈が大きく、葉が長く、根が発達しているのが特徴です。また、粒も大きめです。収穫量や食味は水稲に劣るものの、水田を作らずに畑で栽培できるため、育成が容易です。特に、水田を作ることが難しい地域で栽培されてきました。

日本では、治水技術の進歩や水稲の品種改良により、陸稲の栽培面積は減少しましたが、現在でも一部地域で栽培されています。

特徴

陸稲の栽培方法は、水稲のように苗を育ててから田植えをするのではなく、種籾を直接畑に播く直播（じかまき）のみです。そのため、苗の育成や田植えの手間を省くことができます。

また、品種によっては、縞葉枯病やいもち病に強いものもあります。さらに、特定の作物と同時に栽培することで、害虫の侵入を防ぐ効果も確認されています。一方で、連作障害が発生しやすく、雑草が生えやすいという課題もあります。

陸稲は、品種改良の際に有用な遺伝子資源としても注目されています。

品種改良

1920年頃から人工交配による品種改良が進められ、1926年からは全国的な育種組織の活動により、優良品種の選抜や固定が行われました。水稲と同様に、粳米（うるちまい）と糯米（もちまい）の2種類がありますが、陸稲では糯米の品種が多いです。

代表的な品種としては、ネリカ米のほか、日本では日野市の平山、茨城県のキヨハタモチ、トヨハタモチ、ゆめのはたもちなどが知られています。

栽培史

考古学的調査によると、日本では縄文時代から陸稲が栽培されていた痕跡があり、水田稲作よりも古い可能性があります。文献上では、1229年に作成された「日向櫛間院田畠目録」に「野稲畠」として記録されており、当時から「野稲」と呼ばれていたことがわかります。

中世から近世にかけては、南九州や北関東などで広く栽培されていました。17世紀半ばに成立したとされる日本最古の農書『清良記』には「畑稲」、1697年に刊行された農書『農業全書』には「畠稲」「野稲」「旱稲（ひでりいね）」という名称で登場します。

用途

かつては、陸稲米はあられや煎餅の原料として用いられていましたが、現在ではほとんどが水稲米に置き換わっています。また、自衛隊の食事にも利用されていたことがあります。

生物学研究所の畑でも栽培されており、上皇明仁も作付けを行っていました。

関連項目

日本の農林水産業
稲作
田

外部リンク

小野敏忠、「日本陸稲品種の来歴について 育種學雜誌 1973年 23巻 4号 p.207-211
AHMAD Sayeed, 小葉田亨, 高見晋一、「イネ幼植物の干ばつ下における生存能力と乾燥回避性ならびに乾燥酎性との関係」 日本作物學會紀事 55巻 3号, p.327-332(1986-09)
石井卓郎：わが国のこれまで77年にわたる陸稲育種研究の成果 名古屋大学農学国際教育協力研究センター 農学国際協力. v.8, 2010, p.89-121

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