ネーメト・ミクローシュ (政治家)

ネーメト・ミクローシュ：ハンガリー民主化の立役者

ネーメト・ミクローシュ（Németh Miklós）は、1948年1月14日生まれのハンガリーの政治家、経済学者です。1988年から1990年までハンガリー首相を務め、東欧革命という激動の時代に、ハンガリーの民主化に大きく貢献しました。

生い立ちと初期の経歴

ネーメトは、現在のボルショド・アバウーイ・ゼンプレーン県モノクで農家に生まれました。カール・マルクス経済大学（現ブダペシュト・コルヴィヌス大学）を卒業後、教員・研究者として勤務。1974年から1976年には、ハーバード・ビジネス・スクールに留学し、経済学の知識を深めました。1976年にハンガリー社会主義労働党に入党し、党内で要職を歴任しました。

首相として

1988年、ネーメトはグロース・カーロイの後任として首相に任命されました。首相就任後、反体制派との円卓会議を開き、総選挙の実施に合意。ハンガリーの民主化に向けた重要な一歩を踏み出しました。

1989年5月には、オーストリア国境の鉄条網の一部撤去を決定し、「鉄のカーテン」を取り払いました。同年8月には、民主化勢力による汎ヨーロッパ・ピクニックを後援。そして9月11日、東ドイツ市民がオーストリア経由で西ドイツへ向かう際のハンガリー通過を許可しました。この決定は東ドイツ政府からの激しい抗議を招きましたが、ベルリンの壁崩壊の遠因となりました。

ネーメトは、ソビエト連邦のゴルバチョフ書記長と秘密裏に会談し、ソ連軍がハンガリーの内政に介入しないことを確認。また、西ドイツ政府とも非公式に連携し、東西間の緊張緩和に努めました。1989年10月には憲法改正により、ハンガリーは人民共和国から共和国へと移行。ハンガリー社会主義労働者党もハンガリー社会党へと移行し、ネーメトは社会党の創設メンバーとして、ポスト共産主義政権の初代首相となりました。

辞任後のキャリア

1990年の議会選挙でハンガリー民主フォーラムに敗れ、首相を辞任。その後、欧州復興開発銀行（EBRD）の副総裁に就任し、旧共産圏の中東欧諸国の経済移行を支援しました。2002年にはハンガリー社会党から首相候補として再出馬を目指しましたが、党の公認を得られず断念。メッジェシ・ペーテルが後任の首相候補となり、選挙で勝利しました。

ネーメト・ミクローシュは、ハンガリーの民主化を主導し、東欧革命の歴史に名を刻んだ政治家です。彼の決断と行動は、冷戦終結とヨーロッパの統合に大きく貢献しました。

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