中東欧

中東欧（Central and Eastern Europe, CEE）は、ヨーロッパを区分する際に用いられる用語ですが、その定義は一様ではありません。主に二つの意味合いで使われます。

一つ目は、中欧と東欧を合わせた地域を指す場合です。この広義の解釈では、「中東とヨーロッパ」という誤解を避けるため、「中東欧」という表現が用いられます。二つ目は、中欧のうち、過去に東側諸国に属し、2004年以降に欧州連合（EU）に加盟した国々のみを指す場合です。日本では一般的に前者の意味で用いられることが多いですが、英語圏では後者の意味、特に「CEE」という略称で用いられることもあります。

中東欧の範囲を考える際、冷戦時代の社会主義体制下にあった国々（東側諸国）が基準となることが多いです。この定義では、中欧に分類されるドイツ、オーストリア、スイスは含まれません。逆に、冷戦時代に資本主義体制にあった国々（西側諸国）を西欧と呼びます。英語圏では、中東欧（CEE）を中欧の東半分、つまり旧共産圏と捉えることもあり、この場合は、冷戦時代に中立だったオーストリアが含まれることもあります。

冷戦時代、東欧は歴史的に東方教会圏を表す言葉でしたが、社会主義諸国を指す言葉として拡大されました。しかし、東欧革命後、チェコ、ポーランド、スロベニアなどの国々は、歴史的に西方教会圏に属していたことから「中欧」という用語を希望し、中東欧という新たな用語が生まれました。

ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ、グルジア、アルメニア、そして南部バルカン諸国は、経済的には他の旧東側諸国との共通点がありますが、EU、NATO、シェンゲン協定に加盟していないなど政治的な立場が異なります。そのため、中東欧に含めないこともあります。これらの国々を除外する場合、英語圏でのCEEの概念に近いものとなります。しかし、ロシアを含める場合は「中東欧ロシア」という表現が用いられます。

日本の外務省では、ヨーロッパを西欧課と中・東欧課で管轄しています。中・東欧課の管轄範囲は、旧社会主義諸国よりも広く、ドイツなども含まれます。ただし、ロシアはロシア課の管轄となり、中・東欧には含まれません。

以下に、中東欧に含まれることが多い国々をまとめます。

旧ソ連諸国（NIS諸国）
ウクライナ
ベラルーシ
モルドバ
ロシア

バルト三国
エストニア
ラトビア
リトアニア

旧ソ連以外の東側諸国
スロバキア
チェコ
ハンガリー
ブルガリア
ポーランド
ルーマニア

その他の旧社会主義諸国
アルバニア
クロアチア
コソボ
スロベニア
セルビア
ボスニア・ヘルツェゴビナ
北マケドニア
モンテネグロ

その他（中東欧に含まれる可能性はあるが、含めないことが多い国々）
オーストリア
ギリシャ
スイス
ドイツ
トルコ
リヒテンシュタイン


これらの国々は、歴史的、政治的、経済的な背景により、中東欧という枠組みで一括りにされることもあれば、個別に扱われることもあります。中東欧という概念は、非常に複雑で多義的であるということを理解しておくことが重要です。




関連項目:
* CEE証券取引所グループ

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