ネ230 (エンジン)

ネ230ターボジェットエンジン

ネ230は、日立製作所によって1944年に開発されたターボジェットエンジンです。このエンジンは、戦時中の日本において、民間企業が主導して進められたジェットエンジン開発の一環として誕生しましたが、戦争の激化に伴い、開発は思うように進行しませんでした。

開発の背景と経緯

1942年末、陸軍は第二陸軍航空技術研究所という機関を中心に、ジェットエンジンの開発を開始しました。このプロジェクトでは、東京帝国大学の航空研究者たちが提案したネ101モータージェットや、ネ201ターボプロップエンジンに加え、川崎航空機から派遣された林貞助技師によるいくつかのエンジンが開発されました。提案されたエンジンには、基礎研究用のネ0ラムジェットや、補助エンジン用のネ1・ネ2モータージェットといったものが含まれていました。

しかし、開発は難航し、1944年7月にはドイツから技術資料が入手できる見込みが立つことになり、それに併せて一部のエンジン開発が中止されることとなりました。この時点で、いくつかの試作機は既に開発が停滞していました。

その後、陸軍と海軍の協力により、ターボジェットエンジンの開発が再び民間企業に発注され、日立製作所が選ばれました。こうした流れの中で、ネ230の開発が進められることとなります。

ネ230の性能試験

1945年3月にネ230の1号機が完成し、高萩工場内の試験場で性能テストが行われました。5月に試験が完了し、続いて2号機もほぼ完成していましたが、性能試験の最中に終戦を迎える形となってしまいました。これにより、ネ230は実戦には投入されることなく、その開発が終了しました。

部品の発見

ネ230の歴史に関する新たな発見もあります。2015年6月、元中島飛行機の三鷹研究所跡地でステンレス製の部品が見つかり、調査の結果それがネ230に関連する部品であるという可能性が高いとされました。この発見は、ネ230の存在が忘れられつつあった時代に新たな構成要素を見いだしたことに他なりません。

諸元

ネ230の技術仕様は以下の通りです。直径は780mm、重量は900kgという設計になっています。圧縮機は軸流式で、7段の圧縮を行い、圧縮比は2.86に設定されています。タービンは1段で、タービン入口温度は800℃となり、回転数は9,000rpmに達します。空気の流入量は18.6kg/sで、推力は885kgを生成します。

まとめ

このように、ネ230は日本の航空技術史において、重要な役割を果たすことができなかったものの、戦争の中での技術開発を示す象徴的な存在です。高度な技術を持つターボジェットエンジンの開発は、その後の日本の航空機開発においても重要な教訓となるでしょう。

もう一度検索