モータージェット

モータージェットとは

モータージェット（motorjet）は、主にレシプロエンジンによって動かされる圧縮機を利用する初期の形態のジェットエンジンです。このエンジンは、サーモジェット（thermojet）とも呼ばれることがありますが、この名称は特にパルスジェットの一種を指すことが一般的です。モータージェットは、第二次世界大戦以前には航空機用エンジンとして一定の注目を浴びましたが、ターボジェットエンジンなどの効率的な技術の実用化に伴い、その採用は次第に減少していきました。

モータージェットの仕組み

現代の多くのジェットエンジンは、ジェット噴射のエネルギーをタービンを介して回収し、その力で圧縮機を回転させる仕組みを持っています。しかし、初期のジェットエンジンでは、タービンが高温や強い遠心力にさらされるため、材料や加工技術の限界により非常に不安定で壊れやすいものでした。このため、耐久性のあるタービンでは十分な回転数を得ることが難しかったのです。

この問題を解決するために生まれたのがモータージェットの概念であり、主にレシプロエンジンを外部動力源として使用して圧縮機を駆動させます。圧縮機は空気を吸入し、圧縮しますが、その後、混合された燃料（通常はガソリン）を燃焼させて推進力を得る基本原理には、他のジェットエンジンと同様の流れがあります。また、レシプロエンジンにプロペラを取り付けることで、二種類の推進力を組み合わせたり、それぞれの推進方法を柔軟に切り替えたりする機能を持つ設計も存在しました。

ただし、モータージェットでは、排気ダクトから得られる推力の半分程度が圧縮機の羽根車によって作り出されるため、実際にはダクテッドファンエンジンに近い特性を示す場合があると考えられています。また、ジェット噴流の速度は機体速度をわずかに上回ることが最も効率良いとされているため、レシプロ機と同じ速度で運行する場合、かえって流速が無駄に高まり効率を低下させる傾向も指摘されています。

開発の歴史

モータージェットを搭載した最初の航空機は、1910年にルーマニアの発明家アンリ・コアンダが製作したコアンダ=1910です。しかし、この機体は地面での滑走中に制御を失い、炎上してしまい、正式な飛行テストは実施されませんでした。

1940年には、イタリアのカプロニ・カンピニ N.1が初飛行を果たし、モータージェットの中で最も有名な機体となりました。この機体は当時のファシスト政権の宣伝により「世界初の飛行したジェット機」と称されましたが、実際にはその一年前にドイツでターボジェットエンジンを搭載したHe 178が初飛行を達成していました。

特に第二次世界大戦中は、軍用機としてモータージェットの研究が盛んに行われましたが、実用化につながった機体はほとんどありませんでした。日本では桜花22型用のツ11エンジンが少数生産され、ソ連でもSu-5やMiG-13（I-250）がモータージェット機として完成しました。最近では、趣味としてモータージェットを再現したり、自動車に取り付けたりして楽しむ人々も見受けられます。

まとめ

モータージェットは、航空機の発展における重要な一歩であったものの、効率の面での限界から、他の技術に取って代わられました。それでも、初期のジェットエンジンの研究や発展に貢献したことは間違いありません。

もう一度検索