ノウハウ (知的財産権)

ノウハウとは

ノウハウ（know-how）は、一般的に手続き的な知識を指しますが、特に知的財産の観点から考えると、独自の価値を持つ情報です。

定義

ノウハウの厳密な定義は存在しませんが、国際商業会議所（ICC）は1960年に「ノウハウ保護基準条項」において、工業目的に利用可能な技術に関する秘密の知識と経験を指すとしています。また、著名な研究者の吉藤氏は、技術的な思想や具体的な技術的知識、資料、経験を含む実用的な情報と定義しています。これらの定義から、ノウハウは次の3つのポイントに集約できます：
1. 産業上利用できること
2. 秘密として保持されていること
3. 技術的な情報であること
さらに、情報は文書等の有形の媒体に限らず、技術的指導などの無形の知識も指します。

特許制度との関係

発明者は、技術やアイデアを特許出願するか、ノウハウとして秘密にするかを判断する必要があります。ノウハウは著作権や特許のように、特定の権利の下に登録されることはないものの、技術的な価値を持ち、譲渡や使用許可を行うことが可能です。そのため、ノウハウの保護と保持に関する対策が重要です。

ノウハウの利点

ノウハウの主な利点は、その秘密保持能力です。特許と違い、ノウハウは秘密が守られている限り無期限に利用できるという特性を持ち、特許のような明示的な出願を行わなくても価値を生み出します。特許の場合、出願情報は公開されるため、秘密が失われるリスクが伴います。一方、特許によって獲得した権利は20年間と有限であり、未承認であればノウハウが一般公開されてしまう恐れがあります。

ノウハウの欠点

ノウハウには欠点も存在します。例えば、他者がそのノウハウを特許取得した場合、正当な使用を立証できない限りは使用できなくなります。また、ノウハウを破る行為が違法でなければ、他者がその知識を利用しても法的に差止めることができなくなります。このため、企業においては分からない製法などはノウハウとして保持されることが一般的であり、可視化できる機械の設計などは特許出願によって保護されています。

ノウハウの保護

ノウハウの保護に関する法律として、不正競争防止法が挙げられます。この法律ではノウハウを営業秘密として保護しており、他者がその秘密を故意または重大な過失で使用することを禁止しています。ただし、無過失で得た情報を使用することについては制限がありません。また、秘密状態を維持することが重要なため、ノウハウを開示する際には秘密保持義務契約を結ぶことが求められます。退職する従業員に対しても競業避止義務を課すことが一般的です。

まとめ

ノウハウは、特許などの他の知的財産と異なり、明確な登録制度はないものの、技術的な価値を持つ秘密情報として企業戦略において重要な役割を果たします。産業界では、どのようにノウハウを保持し、利用していくかが重要な課題となっています。

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