ノコル

ノコルの概要

ノコル（モンゴル語: Nökör、中国語: 伴當）は、中世モンゴルにおいて「友人」または「僚友」を意味する用語である。その背景には、チンギス・カンが創設したモンゴル帝国の形成において、特定の家臣に忠誠を誓う存在としての重要性がある。この文脈では、ノコルは単なる友人を超え、「領主に仕える忠実な家臣」としての役割を果たした。

ノコルの起源

ノコルの概念は、チンギス・カン以前から中世モンゴルの遊牧社会に存在していた。多くの遊牧領主が自らのノコルを持っていたとされ、特に『元朝秘史』には、チンギス・カンのライバルであるジャムカが常に約30人のノコルを従えていたエピソードが記されている。また、チンギス・カンの弟であるジョチ・カサルが敗走中に家族とはぐれながらもノコルたちと共に行動した事例も類似のものである。

この中で最も著名なノコルは、アルラト部のボオルチュである。彼は若きチンギス・カンが馬を盗まれた際、彼を助けるという逸話を持つ。その際にボオルチュは「私はあなたのノコルとなる」と発言し、チンギス・カンの最初のノコルとしての地位を得た。このことから、最初のノコルはお互い対等な立場で結ばれた関係を示すものであったと考えられる。しかし、他のノコルたちの多くは、家庭的背景や義理の関係からノコルとなった場合が多く、むしろボオルチュの例は特異であった。

モンゴル帝国におけるノコルの役割

チンギス・カンは自身の絶対的忠誠を求めるため、最初は信頼を寄せなかった氏族長たちよりも、ノコルたちに依存した。このため、彼らの信任と役職の重要性は増していき、1206年にはモンゴル帝国を建国する際にノコルたちは千人隊を与えられ、遊牧領主へと昇進した。ノコルたちはその地位を維持し、モンゴル帝国の支配層として代々重要な役割を果たすこととなった。

また、ノコルは単なる家臣という以上の存在であり、チンギス・カンの親衛隊（ケシク）を構成することにより、さらなる権力基盤を形成した。このことから、モンゴル帝国及びその後継国家において「ノコル」という用語は、原義である「僚友」から「チンギス・カン一門に仕える家兵」へと変化していった。

言語的背景とノコルの影響

モンゴル語での「ノコル」という言葉は、時にアラビア語やペルシャ語の影響を受けて譜代の御家人に非公式な語として訳されることもあった。著名な歴史家、志茂碩敏は『集史』における「ノコル」の翻訳に関して「チンギス・カン一門の御家人」とする現代の理解を推奨している。これにより、ノコルの役割やその影響力の深さが明らかにされている。

結論

ノコルは単なる家臣以上の意味を持ち、中世モンゴルの社会構造において重要な位置を占めていた存在である。彼らの忠誠と貢献は、モンゴル帝国の発展において欠かせない要素であり、その影響は現代に至るまで語り継がれている。

もう一度検索