ノストラダムス (アルバム)

アルバム概要



イギリスが誇るヘヴィメタルバンド、ジューダス・プリーストが2008年に世に送り出したアルバム『ノストラダムス』は、その長いキャリアにおいて画期的な作品として位置づけられています。通算16枚目のオリジナルアルバムである本作は、バンドにとって初のコンセプトアルバムであり、同時に初の2枚組オリジナルアルバムとなりました。実は、過去にアルバム『TURBO』制作時に2枚組のアイデアが浮上したものの、当時のレコード会社側の予算の都合で断念された経緯があり、本作で長年の構想が遂に実現した形です。

コンセプトと制作背景



本作の主題は、タイトルが示す通り、16世紀フランスの有名な予言者、ミシェル・ド・ノートルダム（通称：ノストラダムス）の生涯です。彼の誕生から死、そして後世に語り継がれる予言までが、約100分という壮大なスケールで音楽的に描かれています。この大胆なコンセプトは、バンドのマネージャーであるビル・カービッシュリー氏によって提案されました。彼は前作『ANGEL OF RETRIBUTION』のツアー終盤、メンバーとの食事中にコンセプトアルバムの制作を勧め、題材としてノストラダムスの人生を提案。メンバーはこのアイデアに即座に賛同し、ツアー終了後には、ノストラダムスに関する様々な文献やインターネット上の情報収集に深く取り組んだといいます。

音楽性と構成



本作のサウンドは、バンド自身が「メタル・オペラ」と形容するように、伝統的なヘヴィメタルサウンドに加えて、オーケストラ、クワイア（合唱団）、シンセサイザーといった要素が全面的に取り入れられ、物語の展開に合わせたドラマチックな表現が追求されています。特にギタリストのグレン・ティプトンは、幼少期に母親から受けたクラシック音楽の影響を作品に反映させ、楽曲に奥行きと荘厳さをもたらしています。また、アルバム『TURBO』以来となるシンセサイズド・ギターのサウンドも復活しています。アルバム全体は23曲で構成されていますが、各曲間は途切れず繋がっており、まるで一つの長大な組曲であるかのように流れていきます。これにより、リスナーはノストラダムスの物語世界に深く没入できるような体験が得られます。

収録曲



アルバムは「ACT 1」と「ACT 2」の二部構成で、合計23曲が収録されています。多くのメインタイトル曲には、その前に短いプレリュードが配されており、楽曲の導入としての役割を果たしています。全楽曲は、ジューダス・プリーストの主要なソングライティングを担ってきたロバート・ハルフォード、グレン・ティプトン、K. K. ダウニングの三人によって共作されました。

物語の進行に沿って、ノストラダムスの人生における様々な出来事や感情が描かれています。例えば「PESTILENCE AND PLAGUE」では、ペストの流行の中で医師として奮闘しながらも、愛する妻や子供たちを失うという悲劇に打ちひしがれる彼の苦悩が描かれます。「NEW BEGINNINGS」では、再婚相手であるアンヌ・ポンサルドへの新たな愛が歌われ、そして最終曲「FUTURE OF MANKIND」では、自身の死期を悟ったノストラダムスが、予言が未来へと受け継がれることに思いを馳せ、人類の未来を憂いながら人生を終える様子が描かれています。

参加ミュージシャン



本作のレコーディングには、長年のジューダス・プリーストのラインナップである以下のメンバーが参加しています。


これに加え、作品の壮大さを支える外部ミュージシャンとして、キーボードにドン・エイリーが、そしてストリングスにはピート・ウィットフィールド率いるリアル・ストリングスが参加し、オーケストラルなサウンドに厚みを加えています。

リリース形態



本作は2008年6月にリリースされ、日本盤は同年6月25日にソニー・ミュージックエンタテインメントから発売されました。日本盤は通常盤のみの展開でしたが、本国イギリスを含む海外では、ノストラダムスの予言書を模した豪華なハードカバー本仕様の特別盤も一部販売店でリリースされ、ファン垂涎のアイテムとなりました。また、特定の販売店では、アルバムのアートワークをあしらったLPサイズのポスターやバンドロゴシールといった先着購入特典も用意されました。

『ノストラダムス』は、バンドが既成概念にとらわれず、新たな表現の領域に踏み込んだ挑戦的な作品であり、ヘヴィメタルというジャンルの中でコンセプトアルバムの可能性を広げた、ジューダス・プリーストの歴史において重要な節目となるアルバムと言えるでしょう。

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