ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード

『ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード』（作品24）は、エドヴァルド・グリーグが1875年から1876年にかけて作曲したピアノ曲で、単に「バラード」とも呼ばれています。グリーグの代表作である劇付随音楽「ペール・ギュント」完成の直後に作曲されました。

この作品は、ノルウェーの民謡収集家ルドヴィク・マティアス・リンデマンが採取したヴァルドレス地方の民謡「北国の農民」を主題としています。グリーグは、この民謡をもとに14の変奏とコーダを作曲しました。

作曲当時、グリーグは両親を亡くし、妻との不仲にも悩んでいました。さらに、自身の作曲能力に疑問を感じる中でこの作品を生み出したとされています。そのため、この作品はグリーグのピアノ作品の中でも最も野心的であり、内面的な葛藤が色濃く反映されていると言えるでしょう。

グリーグのピアノ作品の中でも初期に位置づけられ、演奏される機会は少ない方です。これは、主題となった民謡の陰鬱な雰囲気と、それに付随する和音付けが影響していると考えられます。また、演奏には変奏曲としての構成を理解する力と、高度な演奏技術が求められることも、演奏頻度が低い理由の一つかもしれません。

なお、ノルウェーの作曲家ゲイル・トヴェイトがこの曲を管弦楽用に編曲しており、録音も存在します。

構成は、14の変奏とコーダからなり、演奏時間は約21分です。

主題: アンダンテ・エスプレッシーヴォ（ト短調、4分の3拍子）。マズルカ風のリズムで、三部形式です。中間部はポコ・アニマートとなり、やや高揚します。
第1変奏: ポコ・メノ・アンダンテ・マ・ノン・トランクィロ、4分の3拍子。
第2変奏: アレグロ・アジタート、8分の9拍子。
第3変奏: アダージョ。右手の親指で奏でるメロディーをテヌートで演奏するよう指示があります。
第4変奏: アレグロ・カプリチョーソ。
第5変奏: ピウ・レント。レチタティーヴォのような曲想が挿入されます。
第6変奏: アレグロ・スケルツァンド。
第7変奏: 記号なし。16分音符が連続しますが、音符が小節線をまたぐシューマン風の曲調です。
第8変奏: レント。
第9変奏: ウン・ポコ・アンダンテ。
第10変奏: ウン・ポコ・アレグロ・エ・アラ・ブルラ、8分の12拍子。
第11変奏: ピウ・アニマート、4分の4拍子（左手は初め8分の12拍子）、変ニ長調。ホ長調、ト長調へ転調します。
第12変奏: メノ・アレグロ・エ・マエストーソ、8分の6拍子。
第13変奏: アレグロ・フリオーソ。分散和音が特徴的です。
第14変奏: プレスティッシモ。前の変奏から高揚し、クライマックスに達したところで半休止します。
コーダ: アンダンテ・エスプレッシーヴォ。主題が8小節だけ回帰し、静かにト短調で終結します。

この作品は、グリーグの個人的な苦悩と創造性が交錯した、非常に興味深い作品と言えるでしょう。技術的な難易度も高く、演奏には高度な表現力が求められます。

ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラードの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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