ノースアメリカン セイバーライナー

ノースアメリカン セイバーライナー：軍用機から民間機へ、そしてその歴史

ノースアメリカン セイバーライナーは、ノースアメリカン社（後にロックウェル社）が開発した双発ジェット機です。その名称は、主翼や尾翼のデザインが同社のF-86 セイバー戦闘機に似ていることに由来します。アメリカ空軍の多用途練習機研究計画への提案として開発が始まり、軍用機型「T-39 セイバーライナー」として採用されました。その後、空軍、海軍、海兵隊で使用されたほか、民間市場向けにも派生型が開発され、世界中で活躍しました。

開発と改良

セイバーライナーは、当初社内プロジェクトとして開発されました。アメリカ空軍の要請に応える形で、人員輸送と戦闘訓練の両方に対応できる多用途機として提案されました。

民間型試作機「NA-265」は、ゼネラル・エレクトリック YJ85エンジンを搭載し、1958年に初飛行。1963年には連邦航空局の型式認証を取得しました。軍用機のT-39Aは、このNA-265をベースとしていますが、採用後にはプラット・アンド・ホイットニー JT12A8エンジンに変更されました。

民間向けの量産型「シリーズ40」は、試作機を改良し、高速性と広いキャビン空間を実現しました。さらにキャビン空間を広げた「シリーズ60」、空力性能を改善した「シリーズ60A」、キャビン天井高を上げた「シリーズ75」などが開発されました。

1973年のノースアメリカン社の合併後、ロックウェル社はセイバーライナーのエンジンをターボファンエンジンに換装しました。シリーズ60にはギャレット・エアリサーチ TFE731、シリーズ75にはゼネラル・エレクトリック CF700を搭載したモデルが開発されました。これらのモデルは、1981年の生産終了まで製造され続けました。翌年、ロックウェル社はセイバーライナー部門を売却し、セイバーライナー・コーポレーションが設立され、既存機のサポートが継続されました。

800機以上のセイバーライナーが生産され、そのうち約200機が軍用機のT-39でした。多くのT-39は退役後、民間機として再就役しました。2007年までに65機が事故で失われています。

軍用型と運用

T-39は、アメリカ空軍、海軍、海兵隊においてパイロット訓練や多用途輸送などに用いられました。海軍版のT-39Dは、当初はレーダー訓練機として使用され、その後、航空士官の訓練にも使用されました。様々なレーダーシステムを搭載したバージョンが存在し、訓練内容に応じて機種が選定されました。T-39G、T-39Nは、海軍航空士官の訓練に使用され、NATO諸国などの訓練にも活用されました。

セイバーライナーは、最低2名の乗員を必要とし、キャビンの構成により7名から10名までの搭乗が可能でした。軍用機の場合、パイロット1名、教官1～2名、訓練生2～3名といった構成で運用されました。

派生型

セイバーライナーには、多くの民間型と軍用型が存在します。それぞれのモデルは、エンジン、キャビンサイズ、搭載機器などで差異があります。代表的なモデルとしては、シリーズ40、シリーズ60、シリーズ65、シリーズ75などがあります。軍用機には、T-39A、T-39D、T-39G、T-39Nなどがあります。これらの違いは、エンジン出力、電子機器、搭載システムなどによって異なります。

運用国と事故

セイバーライナーは、アメリカ合衆国だけでなく、アルゼンチン、ボリビア、エクアドル、メキシコ、スウェーデンなど多くの国で運用されました。運用期間中には、いくつかの事故や事件も発生しています。代表的なものとしては、東ドイツ領空への侵入と撃墜、複数の墜落事故などがあります。これらの事故は、機体の故障やパイロットのミスなどが原因として挙げられています。

展示機

現在、いくつかのセイバーライナーが博物館などで展示されています。これらの展示機は、セイバーライナーの歴史を伝える貴重な資料となっています。

まとめ

ノースアメリカン セイバーライナーは、軍用機としての役割を終えた後も、民間機として長期間に渡り活躍しました。その高い信頼性と多様な派生型は、世界中の航空業界に貢献しました。しかし、同時に発生した数々の事故は、安全対策の重要性を改めて認識させるものです。その歴史と多様なモデル、そして起こった事故は、航空史において重要な一章を刻んでいます。

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