ノートン (ソフトウェア)

ノートン（Norton）

ノートンは、現在ジェン・デジタル社（かつてのノートンライフロック社）が保有する、国際的に認知されたソフトウェアのブランドです。このブランドは、1990年にシマンテック社（当時）にその運営が移管されて以来、主にコンピュータのセキュリティ、個人情報の保護、そしてオンライン環境の安全確保を目的とした製品群を展開するようになりました。

歴史的背景

ノートンブランドの源流は、1982年にピーター・ノートン氏によって設立されたピーター・ノートン・コンピューティング社に遡ります。同社は当初、パーソナルコンピュータの初期における代表的なオペレーティングシステムであったDOS向けの各種ユーティリティソフトウェアを開発していました。その中でも特に「ノートン ユーティリティーズ」は広く知られていましたが、設立当初の製品ラインナップには、現在ノートンの代名詞ともなっているアンチウィルスソフトウェアは含まれていませんでした。

転換期となったのは、1990年のシマンテック社によるピーター・ノートン・コンピューティング社の買収です。この統合後、社名は「ピーター・ノートン・コンサルティング・グループ」と改められました。シマンテック社は、自身が開発したアンチウィルス技術やデータ管理ソリューションに「ノートン」というブランド名を冠し、さらには創設者であるピーター・ノートン氏の肖像をパッケージデザインに採用することで、ブランドの認知度向上を図りました。

1991年初頭には、ノートンブランド初のアンチウィルス製品である「ノートン アンチウイルス バージョン1.0」が市場に投入されました。この製品は、その後の度重なる機能強化とアップデートを経て、単なるウィルス対策にとどまらず、ファイアウォール機能やスパム対策、フィッシング詐欺からの保護など、包括的なインターネットセキュリティ機能を持つ「ノートン インターネットセキュリティ」へと進化していきました。

さらに、シマンテック社は2014年に事業構造の見直しを行い、セキュリティ分野と情報管理分野の二つに分割しました。この再編において、ノートンブランドはセキュリティ関連事業の中核として位置づけられました。

主な製品と提供サービス

今日のノートンブランドの製品群は、主にパソコン（デスクトップ・ノートブック）、サーバー機器、そしてスマートフォンやタブレットといったモバイルデバイス向けのセキュリティツールに特化しています。これらの製品は、個人ユーザーから企業ユーザーまで、幅広い利用者を対象としています。

現在の主要な製品は「ノートン セキュリティ」であり、これはアンチウイルス機能に加え、パーソナルファイアウォール機能、不要なスパムメールを排除するフィルタリング、悪質なフィッシング詐欺サイトからユーザーを保護する機能など、多様なセキュリティ対策を統合したスイート製品です。この「ノートン セキュリティ」は2014年9月にリリースされ、それまで提供されていた「ノートン 360」、「ノートン インターネットセキュリティ」、「ノートン アンチウイルス」といった個別の主要製品を統合・刷新する形で登場しました。

また、歴史的な製品としては、1990年代後半に差し迫った「2000年問題」への対応がコンピュータシステムで適切に行われているかを確認するための診断ソフトウェアなども提供していました。

ノートン ガイド（Norton Guides）

初期のピーター・ノートン・コンピューティング社は、1985年に「ノートン ガイド」というユニークな開発支援ツールも手掛けています。これは、プログラマが使用するコードエディタから直接呼び出し、アセンブリ言語やその他のプログラミング関連のリファレンス情報を参照できるように設計された常駐型（TSR）プログラムでした。この製品は、リファレンス情報をソフトウェア開発環境内に統合するというアプローチを採用した、初期の商業製品として特に注目されます。現在の統合開発環境（IDE）におけるヘルプ機能やコード補完機能の先駆けとも言える存在でした。

まとめ

ノートンブランドは、かつてDOSユーティリティで名を馳せた企業を起源とし、買収を経てコンピュータセキュリティ分野のリーディングブランドの一つへと成長しました。現在もジェン・デジタル社のもと、デジタル環境における様々な脅威からユーザーを保護するための製品開発と提供を続けています。

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