ノートン・モーターサイクル

ノートンモーターサイクルの歴史：革新と復活の物語

ノートンモーターサイクル社は、1898年、イギリスのバーミンガムでジェームズ・ランズダウン・ノートンによって設立されました。当初は自転車製造からスタートしましたが、1902年には初のオートバイを製造、モーターサイクル業界に参入します。初期は他社製のエンジンを使用していましたが、1908年には自社製エンジンの生産を開始。その後、長きに渡り高性能エンジンで知られるメーカーとして、モータースポーツ界で輝かしい成績を残しました。

創業から戦前までの隆盛

ノートンは、マン島TTレースにおいて数々の勝利を収め、その名を世界に轟かせました。特に、1927年に開発されたCS1エンジンは、1930年代のセニアTTレースで7度の優勝を達成するなど、ノートンの黄金時代を築きました。この時代のノートンは、単気筒エンジンと独自のギアボックスレイアウトによる高い信頼性と操作性で、多くのライダーから絶賛されました。第二次世界大戦中は、イギリス軍へのオートバイ供給に貢献し、軍用オートバイ市場を大きく占めました。

戦後とフェザーベッドフレームの登場

戦後、多気筒エンジンを搭載するイタリアやイギリスのメーカーとの競争激化の中で、ノートンは新たな挑戦を余儀なくされました。1950年代初頭、マッカンドレス兄弟が設計した画期的なフレーム「ノートン・フェザーベッド」を採用した「マンクス・ノートン」が登場。この軽量で高性能なマシンは、数々のレースで勝利を収め、ノートンの復活を象徴する存在となりました。フェザーベッドフレームは、その後多くの市販車にも採用され、ノートンの技術力の高さを証明しました。また、トライアンフのエンジンを搭載した「トリトンズ」などのカスタムバイクも人気を博しました。

AMC傘下時代とコマンドの誕生

1950年代半ば、財政難に陥ったノートンはAMCに買収されました。AMC傘下では、バーミンガム工場の閉鎖や生産拠点の移転などの再編が行われましたが、新たなギアボックスの導入など、技術面での向上も図られました。この時代には、600ccの「ドミネーター」や「マンクス・ノートン」などの名車が誕生しました。しかし、単気筒エンジンの限界やコスト高騰などの問題を抱え、経営は依然として不安定でした。1960年代後半には、AMCが倒産し、ノートンはノートン・ビリヤーズへと再編されます。

ここで、ノートンはロールス・ロイスから招聘したステファン・バウアー博士を主任設計者として迎え、「アイソラスティック・フレーム」を開発しました。この革新的なフレームは、エンジンの振動を大幅に軽減し、快適な走行を実現しました。「アイソラスティック・フレーム」を搭載した「コマンド750」は、洗練されたデザインと高い性能で人気を博し、ノートンの新たな成功時代を築きました。しかし、初期モデルのフレームに欠陥が見つかり、改良が必要となるなど、課題も抱えていました。

NVT時代とロータリーエンジンへの挑戦

1970年代初頭、ノートン・ビリヤーズはトライアンフと合併し、ノートン・ビリヤーズ・トライアンフ（NVT）が設立されました。NVT時代には、850ccエンジンを搭載した「コマンド850」などが発売されましたが、経営難は続き、1977年には倒産しました。

1980年代、ノートンは復活を目指し、今度はロータリーエンジン搭載車「コマンダー」を発売しました。小型ながら高出力のロータリーエンジンは、ノートンの技術力の高さを改めて示しましたが、商業的な成功には至らず、再び生産停止に追い込まれました。その後も、いくつかの復活劇や計画が持ち上がりましたが、財政難や経営問題に苦しむことになります。

現代におけるノートン

2000年代には、アメリカで「コマンドー」の復刻モデルが発売されたり、イギリスの実業家スチュアート・ガーナーがブランドを買い戻して新たなモデルを発売するなど、ノートンの復活劇は続きます。しかし、税金未払いや経営難など、様々な問題を抱え、2020年にはインドのTVSモーターに買収されました。

ノートンモーターサイクルの歴史は、革新的な技術とモータースポーツでの成功、そして幾度かの経営危機と復活劇の繰り返しでした。その歴史は、オートバイ業界における重要な一章を刻んでおり、多くのファンに愛され続けています。現在も、ノートンブランドはオートバイの歴史の中で重要な位置を占めています。

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