ノーマン (漫画)

手塚治虫のSF冒険活劇『ノーマン』：5億年前の月で繰り広げられる壮絶な戦いと友情

1968年、少年画報社の『少年キング』誌上で連載された手塚治虫の漫画作品『ノーマン』。本作は、リアルな描写が主流になりつつあった当時の少年漫画界へのアンチテーゼとして、手塚治虫が描いた、痛快でスケールの大きなSF冒険活劇です。

地球から5億年前の月へワープ

物語の主人公は、中条タクという少年。父親の仕事の都合で家族で引っ越しすることになり、たどり着いたのは謎めいた場所でした。そこにはすでに、フライトとブードルという2人の男がおり、彼らもまた、訳あってここに連れてこられたと語ります。

5人は、フム氏という謎の人物に連れられ、突如として現代の地球から5億年前の月にワープ。そこでは、モコ帝国の王子ノーマンが、宇宙からの侵略者である爬虫類型の宇宙人・ゲルダン人と壮絶な戦いを繰り広げていました。

ノーマン・レインジャー：個性豊かな仲間たちとの出会い

ノーマン王子は、地球をはじめとする様々な星から超能力者を集め、彼らをノーマン・レインジャーとして訓練していました。タク少年も、その一員として迎え入れられ、個性豊かな仲間たちと出会います。

ベガー少佐は、頑固だが繊細な一面も持つ訓練所の所長。再生能力を持つ月人です。ブッチ隊長は、音速で移動できる能力を持ち、鋭い嗅覚を持つ犬族の子孫。ルーピは、スピカ星出身の美少女で、細胞分裂による分身能力を持ち、タクと恋仲になります。

他にも、透視能力を持つイギリス人フライト、動物を操るフランス人ブードル、破壊脳波を持つザロモン、怪力自慢のゴブラン、身体を平たくできるメルス、物資を圧縮できるヨロメキスなど、様々な能力を持つ仲間たちが集結。彼らはそれぞれの事情を抱えつつ、タクと共に戦いに挑むことになります。

超能力と科学技術、そして宇宙人との戦い

物語は、タク少年の念動力、ノーマン王子の瞬間移動、ベガー少佐の再生能力など、多彩な超能力と、未来が見えるタイム・ビューアなどの科学技術が駆使された戦闘シーンが魅力。ゲルダン人の持つ変身能力、毒ガス、仮死ボール、分裂能力、そして念動力といった特殊能力に対抗するため、仲間たちは知略と勇気を振り絞って戦います。

ゲルダン人の毒ガス兵器「ギタラの毒」は、生物の細胞を急速にナトリウム化合物に変質させ、死体は塩のかたまりになるという恐ろしい兵器。タクの父親も、この毒によって命を落とします。

タクの母親は、ベガー少佐の配慮により冷凍保存されるなど、物語には様々なドラマが織り込まれ、読者の心を掴みます。

複雑な人間関係と葛藤

物語は、単なる宇宙人との戦いだけではなく、仲間たちの個性、葛藤、そして友情が丁寧に描かれています。イギリス人のフライトは、望郷の念から降伏派に寝返ろうとするなど、人間ドラマも深く掘り下げられています。

物語は、タクと仲間たちが、様々な困難を乗り越え、友情を深めながら、ゲルダン人たちとの戦いを繰り広げる過程を描いています。

アニメ化への試みと様々なコミックス

本作は、虫プロダクションによってテレビアニメ化を目指したパイロット版が制作されましたが、予算や人員、スケジュールの都合によりお蔵入りとなりました。その後、1977年の『月刊OUT』増刊、1999年の「手塚治虫絵コンテ大全2」などでその一部が公開されています。

また、本作は、サンコミックス、手塚治虫漫画全集、手塚治虫傑作選集、秋田文庫、サンデーコミックス、手塚治虫文庫全集など、様々な出版社から単行本が出版され、長年に渡り多くの読者に愛されています。

まとめ

『ノーマン』は、手塚治虫の代表作の一つとして、その独特の世界観と魅力的なキャラクターたちによって、今もなお多くの人々を魅了し続けています。5億年前の月を舞台に繰り広げられる、壮大なスケールとスリリングな展開、そして人間ドラマが凝縮された、忘れがたい作品です。 様々な超能力を持つキャラクターたちの活躍、そして地球と宇宙、過去と未来が交錯する物語は、読者に深い感動と興奮を与えてくれるでしょう。

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