ノーヴァヤ・ガゼータ

ノーヴァヤ・ガゼータ：ロシアの批判的タブロイド紙

『ノーヴァヤ・ガゼータ』（Новая газета）は、1993年に創刊されたロシアのタブロイド新聞です。日本語では「新しい新聞」という意味を持ちます。発行部数は約50万部で、かつてはミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領が株主を務めていました。

創刊と背景

この新聞社は、ゴルバチョフ氏がノーベル平和賞の賞金を基に創設されました。創刊当初から、ウラジーミル・プーチン政権に対して批判的な論陣を張ることで知られています。しかし、その報道姿勢は、多くの記者や関係者を危険に晒すことになりました。これまでに6人の記者や寄稿者が殺害されており、脅迫や襲撃事件も発生しています。

危険な報道の現場

2003年には、副編集長が不審な死を遂げました。高熱で入院した後、顔の皮膚が剥げ、脱毛が始まり、呼吸困難に陥って死亡しました。当初は原因不明とされましたが、後に放射性タリウムが体内に投与されたことが疑われています。また、2006年には、評論員のアンナ・ポリトコフスカヤ記者が殺害されました。彼女は、プーチン政権やチェチェン紛争における人権侵害を厳しく批判していました。

2009年には、同紙の顧問弁護士でチェチェンの人権問題に取り組んでいたスタニスラフ・マルケロフと、彼を取材中だったアナスタシア・バブロワ記者が、白昼の路上で射殺されるという痛ましい事件も起きました。

困難な状況下での活動

これらの事件を受けて、ポリトコフスカヤ記者の後任であるエレナ・ミラシナ記者は、「彼らは人殺しであり、問題解決のために殺すことを厭わない」と述べています。彼女の言葉は、同紙のジャーナリストたちが、常に危険と隣り合わせの状況で活動していることを物語っています。本社には、殉職した同僚たちの肖像写真が掲げられ、彼らの犠牲を忘れないという意思を示しています。

ノーベル平和賞受賞

2021年、同紙の編集長であるドミトリー・ムラトフ氏がノーベル平和賞を受賞しました。ムラトフ氏は受賞について、「ノーヴァヤ・ガゼータ編集部、特に亡くなった6人の記者が受賞した」とコメントしました。この受賞は、同紙の報道姿勢とジャーナリストたちの勇気ある活動が国際的に認められたことを意味します。

ウクライナ侵攻と報道規制

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻に対して、ノーヴァヤ・ガゼータは反対を表明しました。ムラトフ編集長はノーベル平和賞のメダルをオークションに出品し、ウクライナ難民支援のために寄付しました。しかし、ロシア政府は報道規制を強化し、ノーヴァヤ・ガゼータに対して圧力を強めました。その結果、同紙は業務の一時停止を余儀なくされ、ウェブ上の記事も含めて新聞の発行を停止しました。

新たな展開と分裂

業務停止後、一部の記者は亡命し、ラトビアのリガで『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』を立ち上げました。これは、ノーヴァヤ・ガゼータとは独立したプロジェクトであり、ロシアのニュースをYouTubeやSNSを通じて発信しています。また、元スタッフが『ノーヴァヤ・ラスカズ＝ガゼータ』を創刊しましたが、政府によってサイトへのアクセスが遮断され、短期間で閉鎖されました。

2022年9月には、モスクワの裁判所がノーヴァヤ・ガゼータの紙媒体の発行に必要な登録を無効とする判決を下しました。これにより、同紙は事実上、紙媒体の発行ができなくなりました。

まとめ

ノーヴァヤ・ガゼータは、その創刊から一貫して権力に対する批判的な報道を続けてきました。その活動は多くの犠牲を伴いましたが、ジャーナリズムの使命を追求し続けています。困難な状況の中でも、その報道は国内外から注目されており、その存在はロシアにおける自由な言論の象徴となっています。

参考

* 公式サイト公式サイト

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