ハインツ・ケスラー

ハインツ・ケスラー：東ドイツの軍人、政治家の生涯

ハインツ・ケスラー（Heinz Keßler, 1920年1月26日 - 2017年5月2日）は、ドイツ民主共和国（東ドイツ）において重要な役割を果たした軍人であり政治家でした。彼は国家人民軍航空軍司令官、国防相、人民議会議員などの要職を歴任し、最終階級は上級大将にまで昇りつめました。

第二次世界大戦と反ファシズム運動

ケスラーはドイツ東部のラウバン（現在のポーランド領ルバン）で生まれました。第二次世界大戦中、彼は国防軍の兵士として従軍しましたが、独ソ戦勃発直後の1941年7月にソ連軍に投降。その後、自由ドイツ国民委員会（NKFD）に参加し、反ファシズム抵抗運動に身を投じました。この経験が、彼の後の人生に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。

東ドイツにおけるキャリア

戦後、ケスラーはドイツ社会主義統一党（SED）に入党し、東ドイツの政治体制の中で急速に頭角を現しました。1946年には、自由ドイツ青年団（Freie Deutsche Jugend）の創設メンバーの一人となり、同年にはSED中央委員に選出されました。彼のキャリアは着実に上昇し、1956年9月には空軍司令官、1967年3月には参謀総長、1979年1月には政治総局長を歴任。さらに、1956年から1985年まで国防次官を兼任するという、要職を長期間にわたって務めました。

そして1985年12月3日、ケスラーはカール＝ハインツ・ホフマンの後任として国防相に就任。翌1986年には、党中央委員会政治局員にも選ばれ、東ドイツにおける彼の権力は頂点に達しました。

ベルリンの壁崩壊とその後

しかし、彼の輝かしいキャリアは、ベルリンの壁崩壊という歴史的な出来事によって暗転します。1990年、ケスラーはSEDから改名した民主社会党（PDS）から除名され、ドイツ再統一後には国家安全保障評議会の元メンバーとともに、ベルリンの壁における発砲命令をめぐって裁判にかけられました。1993年、彼は懲役7年半の判決を受け、1998年にベルリンの刑務所を出所しました。彼は一貫して発砲命令の存在を否定していましたが、その主張は法廷では認められませんでした。

晩年

出所後、ケスラーは夫人と共にベルリン・リヒテンベルク区に隠棲し、静かな晩年を送りました。2009年には、ミニ政党の一つであるドイツ共産党（DKP）に入党。2011年にはベルリン市議会選挙にDKPの候補として出馬しましたが、落選しました。2013年に妻に先立たれ、最晩年はカトリック系の養老院で生活を送りました。

2017年5月2日、ハインツ・ケスラーはベルリンにて97歳で死去。激動の20世紀を駆け抜けた彼の人生は、東ドイツという国家の歴史と深く結びついていました。

参考文献

Kessler, Heinz: Zur Sache und zur Person : Erinnerungen. Berlin, 1996, ISBN 392916163X

外部リンク

ハインツ・ケスラーの著作およびハインツ・ケスラーを主題とする文献 - ドイツ国立図書館の蔵書目録（ドイツ語）より。
* Axis History Factbook: NVA - Ministerium für Nationale Verteidigung (MfNV)（ドイツ語）

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