ハインリヒ1世 (バイエルン公)

ハインリヒ1世：波乱の生涯を送った東フランク王家の公

ハインリヒ1世（920年頃 - 955年11月1日）は、東フランク王ハインリヒ1世と妃マティルデの間に生まれました。彼はロートリンゲン大公（939年 - 940年）とバイエルン大公（947年 - 955年）を歴任し、皇帝オットー1世の弟であり、後の皇帝ハインリヒ2世の祖父にあたります。彼の生涯は、王位を巡る争いと、その中で培われた政治的手腕によって彩られています。

生い立ちと初期の反乱

ハインリヒ1世の父が東フランク王となると、母マティルデは彼を王位継承者として溺愛しました。936年に父が亡くなり、兄オットー1世が即位すると、ハインリヒはザクセンに拘束され、ジークフリート伯の監督下に置かれます。937年には、異母兄タンクマールがオットー1世に対して反乱を起こし、ハインリヒも巻き込まれますが、後に解放されました。

938年、ハインリヒ自身が兄オットー1世に対して反乱を起こします。この反乱にはロートリンゲン大公ギゼルベルトやフランケン大公エーバーハルトも参加しましたが、939年にオットー1世によって鎮圧され、ハインリヒは西フランク王ルイ4世のもとに逃亡しました。しかし、同年中にオットー1世に降伏し、ロートリンゲン大公位を得ます。

ロートリンゲンとバイエルン

ロートリンゲン大公となったものの、支配権は在地貴族に移り、再び反発したハインリヒは、941年にオットー1世の暗殺を計画します。しかし、計画は事前に露見し、母マティルデのとりなしによって許されました。

その後、ハインリヒはルイトポルト家のバイエルン大公アルヌルフ悪公の娘ユーディトと結婚し、947年にバイエルン大公位を与えられます。この人事は、同家に男子相続人がいたにもかかわらず行われたものでした。

951年には、オットー1世のイタリア遠征に参加し、ヴェローナとアクィレイアを得ます。この遠征において、シュヴァーベン大公リウドルフと対立し、後のリウドルフの反乱の遠因になったとも言われています。

死とその後

955年、ハインリヒ1世は亡くなり、息子ハインリヒ2世がバイエルン大公位を継承しました。

子女

ユーディトとの間には、以下の3人の子供がいました。

ハトヴィヒ（939年頃 - 994年）：シュヴァーベン大公ブルヒャルト3世と結婚
ゲルベルガ（940年頃 - 1001年）：ガンダースハイム女子修道院長
ハインリヒ2世（喧嘩公）（951年 - 995年）：バイエルン大公（955年 - 976年、985年 - 995年）

ハインリヒ1世は、兄オットー1世との確執、ロートリンゲンとバイエルンにおける支配、そして息子ハインリヒ2世の登場など、波乱に満ちた生涯を送りました。彼の時代は、東フランク王国の政治的安定と、後の神聖ローマ帝国へと繋がる基盤が築かれた時代でもありました。

参考文献

瀬原義生 『ドイツ中世前期の歴史像』 文理閣、2012年
Ludwig A. Winterswyl, Otto der Grosse und das Erste Reich der Deutschen, Obelisk-Verlag, 1937
成瀬治他 『世界歴史大系 ドイツ史1』 山川出版社、1997年

関連項目

* リウドルフィング家

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