ハクエイホウ

ハクエイホウは、1969年、日本の競馬界に彗星のごとく現れた競走馬でした。デビュー戦では単勝1番人気に応え、圧巻の8馬身差で勝利を収めます。その後も特別戦、オープン戦と連勝を重ね、クラシック競走である東京優駿（日本ダービー）への挑戦権を掴みかけました。しかし、ダービーへの道は決して平坦ではありませんでした。

当初、ハクエイホウの騎手は保田隆芳でしたが、保田はすでに重賞2勝馬ミノルでクラシック出走が確定していたため、4走目のオープン競走では野平祐二が騎乗することになります。しかし、このレースでハクエイホウは1番人気ながら11着と大敗。この敗戦は、クラシックへの道を閉ざすこととなり、皐月賞への挑戦は叶いませんでした。

ダービー出走が決定すると、騎手は皐月賞馬ワイルドモアの主戦騎手であった森安重勝に決まりました。しかし、運命の悪戯は続きます。ダービー2日前の枠順発表で、ハクエイホウは逃げ馬にとって不利な大外27番枠を引いてしまったのです。一方、同厩舎のライバルであるミノルは1番枠。明暗を分ける結果となりました。

迎えたダービー当日、スタート直後にはアクシデントが発生します。1番人気のタカツバキが騎手を落馬させる事故が起きたのです。この混乱の中、ハクエイホウは大外枠の不利をものともせず、見事先頭に立ちます。しかし、最後の直線でダイシンボルガードに交わされ、僅差の3着に終わりました。ダービー制覇の夢は叶いませんでしたが、その力強い走りには多くのファンを魅了しました。

ダービー後、ハクエイホウは日本短波賞で重賞初制覇を達成します。その後もオープン戦やクモハタ記念を制し、この年だけで6勝を挙げました。これらの活躍が評価され、ハクエイホウは1969年度の啓衆社賞最良スプリンターに選ばれました。

しかし、1970年以降は古馬との対戦となり、ハクエイホウに合った中距離レースの少なさから苦戦が続きました。1971年の金杯で勝利するも、その5ヶ月後のレースで悲劇が起きます。日本経済賞の終盤、ハクエイホウは故障を発症し、他馬を巻き込む大事故を起こしてしまいました。この事故で他の騎手が重傷を負い、ハクエイホウ自身も左種子骨靱帯断裂と診断されました。そして、数日後、安楽死処分となりました。

ハクエイホウの短い競走生活は、多くのドラマと感動、そして悲しみを残して幕を閉じました。しかし、その活躍は多くの人々の記憶に刻まれ、伝説として語り継がれています。また、ハクエイホウは、尾形藤吉厩舎の同世代の活躍馬4頭からなる「尾形厩舎四天王」の一角を担う存在でもありました。その血統には、1961年の日本ダービー馬ハクシヨウも含まれており、名門の血を受け継いでいたことがわかります。ハクエイホウの短いながらも輝かしい競走生活は、競馬史にその名を刻み込みました。

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