ハサミムシ

ハサミムシについて

ハサミムシ（鋏虫、蠼螋）は、ハサミムシ目（Dermaptera）に属する昆虫のことを指します。この名前は、主に尾端にある特徴的な鋏に由来しています。学名の「Dermaptera」は1773年に昆虫学者のチャールズ・ド・ジールによって命名され、古代ギリシャ語の「derma」（革）と「pteron」（翅）に基づいています。英語では「earwig」と呼ばれ、これは古英語の「ēare」（耳）と「wicga」（虫）の組み合わせから来ています。ドイツ語では「ohrwurm」という名前が使われており、こちらも「耳の虫」という意味です。

この名前の由来には、ハサミムシの後翅が人間の耳に似ているという説がありますが、実際には人間の耳に入ろうとする習性はありません。ただし、偶然に耳に入った事例は報告されています。日本においては、古いトイレの近くに生息していることが多かったことから、「ちんぽきり」や「ちんぽばさみ」といった別名が付けられました。

特徴

ハサミムシは細長い体型を持ち、前翅は短く革質で、後翅は薄く大きいのが特徴です。静止している際には、後翅を畳んで前翅の下に隠すため、腹部の大部分が露出しています。また、種類によっては全く翅を持たないものもいます。

彼らの特徴的な鋏は、直翅目やゴキブリ目の尾毛に由来しています。鋏は捕食や防衛、同種や他種の争いに使用され、危険を感じると青酸を分泌することもあります。

生態

日本に生息するハサミムシは、主に地上の物陰に隠れる傾向があり、肉食性が強いです。草地や砂地に生息し、ダンゴムシや鱗翅目の幼虫などを鋏を使って捕らえます。ただし、草食性の種も存在し、洞窟内ではコウモリの糞を食べることが知られています。最大種であるセントヘレナオオハサミムシは全長84mmに達しますが、2014年には外来種による捕食などから絶滅したと考えられています。

成虫は冬を越し、春先に卵を産みます。雌は産室を作り、卵の世話をすることもあり、卵が孵化するまで面倒を見た後、幼虫に身体を与えて死ぬ性質も持っています。

類似昆虫

ハサミムシは、短い革質の前翅と細長い腹部といった外見から、コウチュウ目のハネカクシ科に似ています。しかし、ハネカクシには尾端の鋏がないため、区別ができます。また、ハサミコムシという別の分類の昆虫でも鋏状の尾部を持っていますが、これは全く異なるグループに属します。

種としてのハサミムシ

具体的な種としてのハサミムシは、Anisolabis maritimaという名前で知られており、マルムネハサミムシ科に分類されます。体色は黒く、湿った場所、例えば石の下などを好みます。オスの方がメスよりも鋏の曲がりが強く、それゆえに一見しただけでは性別を見分けるのが難しいことがあります。

分類

ハサミムシ目は直翅目に近縁な昆虫群であり、研究者によっては直翅目に分類されることもあります。また、ハサミムシの外見は似た種が多いため、形態的な識別が難しい場合があります。現時点で世界には約11科、1930種以上のハサミムシが確認されており、日本では40種程度が知られています。

ハサミムシの多様な生態や特性を通じて、彼らが環境に適応し、さまざまな役割を果たしていることが理解できます。

もう一度検索