ハシドイ

ハシドイ（Syringa reticulata）

ハシドイは、東アジア原産のモクセイ科ハシドイ属の落葉広葉樹です。別名として丁香花、丁香樹とも呼ばれます。

形態

樹高: 最大12m、胸高直径3mに達する亜高木。
樹皮: 灰褐色で平滑、横向きの条線が特徴的でサクラ類の樹皮に似ています。
葉: 広卵形で互生または輪生し、全縁で鋸歯はありません。葉はやや厚めです。
花: 初夏に20cm前後の円錐花序に白い小花を多数つけます。花は芳香があり、咲き進むと黄色みを帯びます。花粉はモクセイ科共通の網目状の彫紋があります。
冬芽: 仮頂芽タイプで対生します。芽鱗は褐色で卵型です。
根: 浅根性で水平根が多く、垂下根も伸ばします。

類似種

近縁種との判別は、葉や幼条の毛の有無、葉や古枝の色形がポイントです。

生態

渓流沿いや湿地周辺に、トネリコ属の樹木と共によく出現します。石灰岩質の土壌にも耐性があります。
更新は実生と萌芽更新によります。シカが好む植物であり、樹皮剥ぎの被害を受けることがあります。テントウノミハムシの食害を受けますが、他のモクセイ科樹木に比べると嗜好性は低いようです。

分布

日本、朝鮮半島、中国東北部など東アジア地域に分布します。

人間との関係

風致: 芳香のある花が咲くため、庭園樹や並木に利用されることがあります。ライラックに比べると植栽は少ないです。
木材: 材は堅く、水に強くて腐りにくいため、土台や杭に用いられます。道管の配置は散孔材です。
薬用・香料: 花や根は香料として利用されることがあります。

種の保全状況

多くの都道府県でレッドデータブックに掲載されており、絶滅危惧種に指定されている地域もあります。

象徴

アイヌの儀式用具であるイナウの材料として用いられていました。火にくべるとよく爆ぜることから、火の神の木とする地方もあります。

自治体の木

北海道釧路市の木に指定されています。

名称

標準和名「ハシドイ」の由来は不明です。花序の咲く姿から「端に集う花の木」が転訛したという説や、木曽地方の方言名に由来するという説があります。アイヌ語名は「プンカウ」または「プスニ」で、火にくべると爆ぜることに由来します。

種類

以下の3つの亜種に分けられます。

S. reticulata subsp. reticulata：日本に分布
S. reticulata subsp. amurensis：中国東北部・朝鮮・沿海地方・日本に分布（マンシュウハシドイ）
S. reticulata subsp. pekinensis：中国中北部に分布

ハシドイは、その美しい花と独特の生態から、人々に親しまれてきた樹木です。しかし、近年は生育地の減少や環境の変化により、その存続が危ぶまれています。ハシドイの保全のため、関心を寄せ、保護活動に協力していくことが重要です。

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