ハシリグモ

ハシリグモ（走蜘蛛、Dolomedes）

ハシリグモは、特に大きく活動的なクモで、主に水辺に生息します。彼らは非常に素早く走ることができ、水面や水中での捕食に特化した特性を持っています。

概説

ハシリグモ属はキシダグモ科に属し、大型で美しい種も含まれています。この属の特徴として、徘徊性であり、網を張ることなく獲物を捕らえることが挙げられます。水辺に住む種が多く、水面に浮かぶアメンボのように見えることもあります。また、非常に俊敏に水面を走ったり、時には水中に潜ったりすることができ、1時間以上水中に留まることもあるクモも存在します。これにより、小動物や小魚を獲物にすることができ、英語では「Fishing spider」と呼ばれています。しかし、この属には水辺以外に生息する種も多く見られます。

特徴

ハシリグモは中型から大型の体形を持つクモで、頑丈な歩脚が特徴です。前中眼が前側眼よりも大きく見え、前中眼と後中眼は四角形の中眼域を形成します。彼らの顎には後列に4つの歯があり、歩脚の長さはほぼ均一ですが、第四脚は第一脚よりもわずかに長いという特性があります。

習性

ハシリグモは通常、獲物を待ち伏せして捕らえるスタイルを採りますが、幼生の一部は棚網を作ることが知られています。一般的に、草の上で静かにしていることが多く、危険を感じるとすぐに草むらに隠れます。また、樹木の幹にしがみついて待機することもあります。水辺の生息種は石の上でじっとしていることが多く、危険が迫ると水中に逃げます。いくつかの種は、水中で1時間以上潜ることができ、さらに暑い日には水中に入って体温を下げることもあります。水辺のクモは、獲物を求めて浮き草の上に身体を固定し、第一脚を水面に触れさせる姿勢を取ります。この姿勢は、水面での微細な振動を感じ取るためのもので、獲物が水中から引き上げられる際には非常に効果的です。主に水生昆虫を捕えることが多いですが、オタマジャクシや小型魚も捕らえることが知られています。これらの種は、しばしばミズグモと混同されることがあります。

配偶行動

ハシリグモの配偶行動は比較的単純で、求愛給餌の行動は確認されていません。雌は卵嚢を口器にぶら下げて運び、この間は餌を取らずに過ごします。卵が孵化する直前には、網のような構造物を作り、その下に卵嚢を垂らします。子グモが孵化すると、その網で身を隠し、周囲に注意しながら徐々に分散していきます。

分類

世界中に広く分布し、約100種類が知られていますが、日本では11種類が確認されています。本土で最も普通に見られるのはイオウイロハシリグモで、全身が褐色のものと白い縦斑があるものが存在します。他にも、スジボソハシリグモやババハシリグモなどがあり、これらは水辺だけでなく草地や林縁にも生息しています。

以下は、日本で見られるハシリグモの種類です：

• - Dolomedes: ハシリグモ属
• - D. japonicus: キクメハシリグモ
• - D. raptor: アオグロハシリグモ
• - D. yawatai: イシガキアオグロハシリグモ
• - D. orion: オオハシリグモ
• - D. fontus: ババハシリグモ
• - D. angustivirgatus: スジボソハシリグモ
• - D. sulfureus: イオウイロハシリグモ
• - D. silvicola: スジアカハシリグモ
• - D. saganus: スジブトハシリグモ
• - D. horishanus: ヘリジロハシリグモ
• - D. zatsun: ササキハシリグモ

以上のように、ハシリグモは多様な種が存在し、それぞれが独自の生態を持っています。

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