ハスラー (映画)

映画『ハスラー』：勝利、敗北、そして人間

『ハスラー』（1961年）は、ロバート・ロッセン監督によるアメリカのドラマ映画。ウォルター・テヴィスの同名小説を原作とし、ポール・ニューマンが演じる若きビリヤードの天才、エディ・フェルソンが、伝説的なプレイヤー、ミネソタ・ファッツとの対決を通して成長していく姿を描いています。

あらすじ

エディは、自らを「ファースト・エディ」と名乗り、最強のハスラーとして名を馳せようとしていました。そんな彼が挑んだのは、15年間無敗という伝説を持つミネソタ・ファッツ。一時は大きく勝ち越すものの、プロの賭博師バートに「負け犬」と見抜かれ、精神力の弱さを指摘されます。一昼夜を超える死闘の末、エディはファッツに完敗。

失意のエディは、自称「女子大生」のサラと出会い、互いに惹かれ合います。しかし、バートとの再会がエディを再びビリヤードの世界へと引き戻します。バートは、ファッツに勝つには才能だけでなく精神力が必要だと説き、エディに後援者になることを提案しますが、エディは拒否。自力で資金を稼ぐことを決意します。

しかし、賭博で稼いだ金で生活しようとしたエディはハスラーに親指を折られ、サラの献身的な介護で回復した後、バートの提案を受け入れます。バートの指示で、エディとサラはケンタッキーダービー開催中のルイビルへ。そこで行われるビリヤード勝負に苦戦するエディを見たサラは、賭博を止めてルイビルを離れるように懇願しますが、エディは聞き入れません。激昂してサラを追い返したエディが見たものは、バートに傷つけられたサラの自殺でした。

悲しみと怒りに駆られたエディは、ルイビルで手にした資金を元に、ファッツに再戦を挑みます。「勝つために必要な精神力は、ルイビルのホテルで手に入れた」と自嘲するエディは、ファッツを打ち破り、大金を得ます。バートは分け前を要求しますが、エディはサラへの愛を語り、勝利にのみ固執するバートこそ負け犬だと非難。バートを打ちのめし、ビリヤード場を後にします。

作品の魅力

『ハスラー』は、単なるビリヤード映画ではありません。主人公エディの成長を通して、勝利と敗北、愛と自己破壊、人間の弱さと強さを深く掘り下げています。ポール・ニューマンをはじめ、ジャッキー・グリーソン、ジョージ・C・スコットら実力派俳優たちの演技も見どころです。

映画評論家のロジャー・イーバートは、本作品の主題はエディとファッツの対決ではなく、エディのサラへの愛情と自己破壊願望の葛藤だと指摘しています。この視点から見ると、『ハスラー』はより深く、人間的なドラマとして観ることができます。

続編とトリビア

1986年には、マーティン・スコセッシ監督による続編『ハスラー2』が製作されました。前作と同じくポール・ニューマンが主演を務め、トム・クルーズが共演。ニューマンは本作でアカデミー主演男優賞を受賞しました。

また、映画のタイトルである『Hustler』には、「勝負師」の他に「売春婦」や「男娼」という意味があるため、公開当初は題名変更の議論があったというトリビアもあります。

まとめ

『ハスラー』は、ビリヤードを舞台に、人間の葛藤と成長を描いた不朽の名作です。ポール・ニューマンの演技、ロバート・ロッセン監督の演出、そしてウォルター・テヴィスの原作が一体となり、観る者の心に深く響く作品となっています。

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