ハズム運動

ハズム運動の概要と歴史

ハズム運動（ハズムうんどう）は、2014年に設立されたシリア内戦における反体制派の連合組織です。この運動は、シリア大統領バッシャール・アル＝アサド率いるバアス党政権を打倒することを目指していました。また、自由シリア軍が有名無実化する中で、今後の反体制活動の主導権を握るべく、穏健な反体制勢力を結集させて作られたのがこの運動です。設立当初はアメリカなどから期待され、シリア政府軍に対する地位を逆転させられる可能性があると見なされていました。

設立背景

ハズム運動の登場以前、2011年に発生したアラブの春はシリアにも影響を及ぼしました。デモは次第に暴力に転じ、政府軍からの脱走兵によって自由シリア軍が結成されました。しかし、自由シリア軍は組織の統制を失い、イスラム過激派による主導権の奪取が進んでいました。これにより、アメリカなど各国は反体制派の中に穏健な勢力を再編し、状況を打開しようと考えていたのです。

ハズム運動の発足

2014年1月、シリア北部で欧米の支援を受けた世俗的反政府勢力の再編成が行われ、ハズム運動が誕生しました。参加したのは、北部ファールーク大隊や第9師団特殊部隊など、数多くの反体制派武装勢力です。設立から短期間のうちに、約1万5000人の戦闘員を擁していました。また、2014年2月頃には、アル＝ヌスラ戦線やシャーム自由人イスラム運動との連携を深めました。

武器支援と国際的関与

2014年4月には、アメリカとサウジアラビアがハズム運動に対戦車ミサイルなどを供給することも正式に発表されました。この支援は、反体制勢力が相当程度組織化されているとの評価を受けた結果と言われています。ハズム運動は、ISIL（イスラム国）に対抗する主要な勢力の一つとして位置づけられ、国際的な注目を集めました。

ヌスラ戦線との対立

しかし、ISILの台頭により、アメリカはハズム運動をISIL打倒のための前線として位置づけました。これまで連携していたヌスラ戦線は、穏健な反体制派に対し攻撃を仕掛けるようになり、ハズム運動は次第にその攻撃の対象となっていきました。結果、2015年3月、アレッポ県での戦闘においてハズム運動はヌスラ戦線に敗北し、崩壊を迎えました。

存続の危機とその後の動向

ハズム運動の崩壊は、アメリカをはじめとする各国のシリア政策の失敗を象徴する出来事ともいえます。その後、残党は他の反体制派組織に吸収される形で活動を継続しましたが、ヌスラ戦線やその他の過激派との関係の中で、穏健な反体制派の存在は次第に周辺化していきました。さらに、2015年末には、穏健派の再編成が試みられたものの、その活動はヌスラ戦線の支配下に置かれる結果となりました。

ハズム運動の歴史は、シリア内戦における反体制派の複雑な状況を浮き彫りにしており、穏健な勢力が過激派に押しつぶされる悲劇を如実に示しています。結果として、多くの反体制派は孤立し、自らを維持するための基盤を失っていくこととなりました。

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