ハドリアヌスの長城

ハドリアヌスの長城

ハドリアヌスの長城（Hadrian's Wall）は、ローマ帝国時代における重要な防御施設で、イギリス北部に位置しています。146年に秩序を保つためにローマの皇帝ハドリアヌスによって建設が始まりました。この城壁は、元々スコットランドとの境界防御を目的としており、地元のケルト人からの侵入を防ぐための重要な役割を果たしました。

当時のローマ帝国は、ブリタニアに広がる領域を持っていましたが、特に北部においては外敵からの脅威が常に存在していました。そこで、ハドリアヌスはこれらの脅威に対処するために、約122年から32年かけて長城を建設することを命じました。全長約117.5kmに及ぶこの城壁は、ニューマーケット・アポン・タイン（ニューカッスル）からカーライルまでの地域を結び、強固な防衛線として機能しました。

建設と構造

長城は、完成当初4から5メートルの高さおよび3メートルの厚さを持っていましたが、時間が経つにつれて建築技術が進化し、後の部分は約2.5メートルの厚さになったと考えられています。最初は土塁で構築されましたが、後には石材で補強され、堅牢さを増していきました。監視所や要塞が約1.5kmおきに設置され、各要塞には約500人から1000人の兵士が配置されました。

また、壁の南側には防御用の堀が掘削され、これも「バルム」と呼ばれています。この「バルム」という名称は、後の英語の「ウォール」の起源ともされています。長城の一部は現在でも保存状態がよく、多くの観光客が訪れる観光地となっています。

歴史的意義

ハドリアヌスの長城は、ローマ帝国の領土拡大の限界を象徴する建物です。この長城が建設されたことで、帝国の北方防衛政策の転換が表されました。4世紀の後半、ローマの支配が及ばなくなる時期でもこの城壁は利用され続け、17世紀まで軍事的にも重要な役割を果たしました。これによりイングランドとスコットランドの国境が固定化され、現在の国境にも影響を与えています。

世界遺産登録

1987年にハドリアヌスの長城はユネスコの世界遺産に登録され、その歴史的価値が国際的に認識されました。この長城はただの壁に留まらず、ローマ帝国の防衛戦略や当時の技術力、文化が詰まった重要な遺産として、今なお多くの人々を魅了し続けています。観光名所としても知られるこの場所では、訪れる人々が過去の偉大な文明とその栄光を垣間見ることができるのです。

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