ハナカケトラザメ

ハナカケトラザメ (Scyliorhinus canicula)

ハナカケトラザメは、トラザメ属に属するサメの一種であり、主にノルウェーからブリテン諸島、さらにはセネガルまで広がる海域で見られます。このサメは、大陸棚上から大陸斜面最上部にかけての水深数メートルから400メートルの範囲で生息し、砂や礫、泥底を好む特徴があります。

形態

ハナカケトラザメの最大個体は約1メートル、重さは2キログラムに達することがあります。小型で細身な体を持ち、頭部は丸みを帯びています。背中には2基の背鰭があり、尾鰭の方向を見ています。この種の皮膚は粗い質感を持ち、まるで紙やすりのような触感です。

特に目を引くのは、その背面の色合いです。灰褐色から黄褐色を基調とし、暗褐色から黒色の小さな斑点が散りばめられています。オスはメスよりも歯が大きく、西アフリカのオス個体は特に強い顎を持ち、繁殖行動や摂餌活動に適応していると考えられています。

生態

繁殖

ハナカケトラザメは卵生で、角質の殻に包まれた卵を産みます。これらの卵は主に浅い海域の大型海藻に付着することが多いですが、深い場所に生息する無脊椎動物に産み付けられることもあります。卵のサイズはおおよそ4×2センチメートルで、孵化までの期間は水温に依存し、5から11ヶ月の間とされています。ハナカケトラザメの幼魚は出生時に9から10センチメートルほどで、雌雄ともに性成熟までの成長は個体によって異なります。

摂餌

主な食物は十脚類や魚ですが、軟体動物や棘皮動物、甲殻類なども摂取します。特に幼体は小型甲殻類を好み、成長するにつれ、ヤドカリや軟体動物を捕食するようになっていきます。ハナカケトラザメは、夏に特に活発に餌を求めることが観察されており、雌と雄の間での食性の違いは見られません。また、独特な捕食行動として「スケールラスピング」があり、これは尾の周りに接触した獲物を素早く引っ掛けて噛み千切る方法です。体形はこの捕食方法を実現するために適しています。

人との関わり

モデル生物

ハナカケトラザメは、発生学の研究において優れたモデル生物とされています。その理由は、年間を通じて様々な発生段階の卵を大量に入手できる点や、体内受精を行うことにあります。卵は曝気された海水でも正常に発生し、実験室内で管理が容易です。また、原腸形成から神経胚形成までのステージが明確であるため、研究に適しています。

保護

このサメは、北東大西洋と地中海で最も多い板鰓類として知られ、沿岸漁業において食用にされることがあります。ただし、商業漁業や釣り人によって捕獲された後、多くは海に戻されるため、生存率は非常に高く、98％に達すると言われています。一部地域では個体数が減少している可能性もありますが、全体的には安定しているか、増加傾向にあるとされています。IUCNはその保全状況を「軽度懸念」と評価しており、将来的な減少を防ぐためには水揚げや廃棄量のモニタリングが重要です。

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